企業のグローバルでの雇用や労務管理のサービスをSaaSで提供する米Deelは12月1日、日本でのサービス提供を発表した。同日には、同社のサービスと日本でのビジネス展開に関する記者発表会が行われた。
Deelは2019年に設立したスタートアップで、企業が世界中から人材を雇用するための雇用・コンプライアンスおよび給与支払の課題解決につながるサービスを提供している。
Deel カントリーマネージャーの中島隆行氏は、「リモートワークの時代には、人は国境を越えて働き、企業も業務に合った最適な人材をグローバルなタレントプールから雇えるメリットがある。一方、現地の税制、法律、通貨への対応が必要になり、当社はそうした課題に対するプラットフォームを提供する」と説明した。
同社が主に提供するのが、従業員の派遣サービスである「EOR(Employer of Record)」と、業務委託の労務管理サービス「コントラクター」の2つだ。
EORは、企業の海外雇用を代理するサービスだ。海外で従業員を雇用する場合、通常は企業が現地で設立した法人を通じて行われるが、EORでは他国の従業員とDeelの現地法人が雇用関係を結び、Deelから日本企業に従業員を派遣する形態をとる。
日本企業とDeelの間では、コンサルタント契約が結ばれ、その契約の範囲内でDeelから派遣される従業員に業務指示などを行える。Deelが現地法人を有する150カ国以上でのサービス提供に対応している。サービスの利用料金は、従業員1人当たり月額500ドルからとなる(国により金額が異なる)。
EORでは、Deelが提供するオンラインプラットフォーム上で、現地の法令に準拠した契約書を作成し、契約締結まで行える。また、給与計算と経費精算、国ごとの源泉徴収(税金/社会保障)のほか、120カ国以上の現地通貨や仮想通貨での給与支払いに対応可能だという。同プラットフォームでは、税金、許可申請、コンプライアンス関連の書類の収集と書類の提出状況の管理なども行える。
オプションとして、国ごとの最適な福利厚生パッケージや、各国に対応した生命保険/医療保険も利用できる
コントラクターでは、企業が業務委託者と直接契約を行い、その請負契約の締結のためのサービスをオンラインプラットフォーム上で提供するサービスだ。
EPRと同様に、現地の法令に準拠した契約書作成や契約締結のほか、給与計算と経費精算、給与支払いが行えるほか、税金、許可申請、コンプライアンス関連の書類の収集もできる。オプションには保険や福利厚生のほか、給与の前払いサービスや審査不要のデビットカードを発行できるサービスもある。
同社が提供するプラットフォームからは請求書の自動作成・収集・支払い額の自動計算を行えるだけでなく、Mass Payという技術を用いてワンクリックで給与や経費を支払うことが可能だ。送金方法は銀行送金、クレジットカード、Wise、仮想通貨(USDC) などから最適なものを選択し、各契約者の口座へ送金できる。
中島氏は、「当社はHRTech企業であり、FinTech企業でもあると自負している。国境を超え、労働者にシームレスなペイロール(給与計算システム)を提供するとともに、銀行口座の開設をせずとも、どこの国でも働ける環境、給与を支払える環境を提供したい」と語った。
日本でのサービス展開にあたっては、このほか日本企業が世界で競争力を持つためのグローバル組織作りのサポートのほか、日本企業や自治体による海外の労働者のリモート雇用などの実現を目指す。そのために、国内の16の企業などとパートナー契約を結び、エコシステムの構築を進めるという。
福利厚生/保険/テクノロジー分野のパートナーとなるSOMPOホールディングスからは、同社デジタル事業オーナー兼グループCDO 執行役専務の楢崎浩一氏が登壇し、協業のねらいを説明した。
「当グループでは、グローバルに働く人が安心・安全・健康に働ける環境をつくりたいと考えており、保険に限らず、ヘルスケアやデジタル領域のサービスを開発・提供してきた。我々が培ってきたデジタル技術の知見・経験と、Deel社とのグローバルな実績・展開、技術を掛け合わせて共創を実現したい」(楢崎氏)
同社はDeelとともにグローバル雇用を推進し、世界中のどこにいても働けて、企業がどこの国の人材でも採用できることが当たり前になる世界の構築を目指して、国籍を問わず多様で優秀な人材の確保の機会の拡大、国外スタートアップの日本市場進出および日本のスタートアップの国外進出の後押し、多様で柔軟な働き方を志向する人々が安心・安全・健康に働ける環境づくりに注力するという。