iCAREは12月1日および2日、働くひとのウェルビーイングにつながる道筋を探るビジネスカンファレンス「Carely Susatainable Expo 2021」を開催した。今回はその中から、iCAREの代表取締役 CEOである山田洋太氏が「働くひとの健康は、こうやってパラダイムシフトを迎えた」と題して語った講演の内容を紹介する。

山田氏は講演の冒頭に「社会構造が大きく変革することこそが革命である」と述べた上で、「人類はこれまでに大きな3回の革命を経験し、現在は4回目の革命を迎えている」と切り出した。農業革命、産業革命、情報革命を経て、第4の革命として『共存革命』が起こっているのだという。

産業革命による大量生産・大量消費の潮流は、人類に物的な豊かさをもたらした。続く情報革命によって精神的な豊かさや、誰も取り残されない社会構造が求められるようになり、共存社会のあり方が考えられるようになってきている。同氏は「共存社会は、これまで対立構造にあったものでさえも飲み込んでいくだろう」と補足した。

共存革命が起きたポスト資本主義社会においては、これまで対立構造にあった労働者と使用者の関係性も共存関係へと変化を遂げるとのことだ。従来は縦の関係にあった労働者と使用者は、デジタルテクノロジーによって1人の労働者の意見が非常に大きな力を持つようになったことから横の関係へと変化している。1人1人の労働者の声を使用者が無視できない時代が訪れているのだ。

  • 個人の価値観が多様化する現代に合わせて、ルールは最小限であるべきだという

    個人の価値観が多様化する現代に合わせて、ルールは最小限であるべきだという

これからの時代に企業が成長を遂げるために必要な5つの要素として、同氏は「安全と衛生」「健康づくり」「働きやすさ」「働きがい」「生きがい」を紹介した。これらの5要素は企業が主体となって取り組むべきものであり、その土台には事業戦略と経営者のコミットメントがあるのだという。また、これらの要素は並列な関係にあり、企業ごとに限られたリソースをどのように配分するかを検討する必要があるとのことだ。

  • 事業成長のための5要素(リングス)

また、現代では会社に個人の価値観を知られたくないと感じる人が多い一方で、会社には個人の価値観を尊重してほしいという矛盾を抱える場面が多い。「健康データによってこの矛盾は乗り越えられる」と山田氏は述べた。

特に近年はテクノロジーと健康データによって個別性を排除することが可能な時代であり、データをもとに専門家が社内の状態を把握できる体制が重要なのだという。女性の労働環境を例にすると、「社内の20歳代の女性の何割が妊活に不安を持っているか」を捉えることが重要なのであり、「誰が妊活をしているかを知る必要はない」のだ。

こうしたデータをタグ機能や自動リスト化などのシステムで把握し、社内の希望者に適切なサービスを提供して、そのサービスがどれだけ利用されたのかを集計することで次のサービスを改めることが可能だ。このように、個別性を排除しながらも個人の価値観に寄り添ったサービスの提供が叶うとのことである。

これまでの健康施策は従業員のニーズを捉えることができないために、会社からの健康の押し付けになってしまう場面が多々あったようだ。だが現代は、従業員のニーズと事業の優先度の両軸を高められる時代である。山田氏は「システムやテクノロジーの発展によって、健康データから事業を成長させられる時代に突入した。働くひとの健康は確実にパラダイムシフトを迎えている」と力強く語って講演を結んだ。

  • 事業の優先度と従業員のニーズの両軸を、テクノロジーで満たせる時代が到来しているという