TrendForceによると、メタバースの開発は、半導体の演算能力の向上と低遅延・高速ネットワークのカバレッジの向上とは別に、エンドユーザーによるAR/VRデバイスの活用にも依存することとなる。そのため、2022年のAR/VRデバイスの出荷台数は前年比26.4%増の1202万台となり、2025年にはそれが2576万台にまで達すると予測されるという。
民生ならびに業務用市場においてAR/VRデバイスが成功するか否かは、価格やシステム統合の程度によって決定されるとTrendForceでは説明しているが、これら2つの要因は、先進企業が競争優位性を保つために必須となる。ただし、AR/VRハードウェアに関する粗利益と純利益を考慮すると、これらのデバイスを競争力のある価格で提供することも、AR/VRデバイスの出荷量を増やすことも困難になっているという。現在、民生用市場と業務用市場で主導的な地位にあるのはOculus(Meta PlatformsのVR事業部門)とMicrosoftである。
こうした状況にもかかわらず、メタバースの人気の高まりにより、ますます多くのハードウェアブランドメーカーがAR/VR市場に参入し、2022年にはオンラインサービスプラットフォームプロバイダーがハードウェア市場の成長を直接的または間接的に推進するようになるという。民生市場に関しては、AR/VRデバイスサプライヤは、ハードウェアの収益性の低下をソフトウェアの販売促進によって補いながら、低価格でありながら高スペックのデバイスを介してユーザーベースを拡大し、市場への浸透を高めることを目指す模様である。例えば、Oculusは市場優位性を維持することで、Oculus Questの市場シェアを2022年には66%にまで引き上げることを目標にしている。
一方の業務市場に関しては、リモートインタラクション(遠隔打ち合せ)や仮想コラボレーションからデジタルツインに至るまでのアプリケーションが成長しており、デジタル化の流れに沿って、企業はますますAR/VRデバイスの採用を進めると見られる。主に低価格かつ高スペックの製品が牽引する民生市場と比べ、ビジネス(業務用)市場は、高価格で高性能な製品をより積極的に選択する可能性が高いが、そのような製品は完全にシステムに統合された形で提供されるか、カスタマイズされたサービスとして提供する必要がある。Microsoftは、法人向け業務用市場で比較的大きな競争優位性を享受しており、同社のHoloLens 2は、2021年の年間出荷台数が20万台を超える数少ない業務用ARデバイスの1つになると見られている。
なお、5Gの急速な普及を考えると、低価格のARメガネと5Gスマートフォンのコンピューティングおよびネットワーキング機能によって実現されるビデオベースのリモートアシスタンスへの応用は、業務用AR/VRのユースケースになる可能性があることから、TrendForceは、これらのアプリケーションが低コストで簡単に展開できるようになることが、企業が今後より多くのAR/VRの業務用アプリケーションを採用する意欲を高めるだけでなく、メタバースに関連する業務用サービスの開発を加速するとしている。