UMCが、一部顧客を対象に2022年の長期契約の生産受託価格を引き上げる模様だと台湾の経済メディアである經濟日報が報じている。

値上げの対象となる顧客は、UMCの売上高全体の3割以上を占める米系3社のいずれかとみられており、300mmウェハの28~40nm製造プロセスを用いた半導体製品の受注価格を8~12%ほど2022年1月から引き上げるという。

UMCの米国系大手顧客としてはAMD、Qualcomm、Texas Instruments(TI)などが挙げられるが、こうした長期契約を結ぶ顧客の中には、2022年の値上げを見越してすでに固定価格での長期契約を結んだところもあるという。

UMCは、足元の市況を反映し、来年度の長期契約の受注価格を一部見直すと説明しており、値上げ対象の顧客の売上高シェアや値上げ幅が大きいことに加え、引き続き受注が好調なことなどから、2022年の売上高や利益の増加が見込まれている。

すでに同社は今年も、生産受注価格を四半期ごとに何度も引き上げ続けており、価格を繰り返し上昇させても、その生産能力は基本的に2022年までに「完全に売り切れ」状態になっているという。

また、同社は2023年に、台南市に増築中の300mm工場のFab 12A P6で月産2万7500枚(300mmウェハ)で生産を始める予定で、生産品目は、成熟プロセスを用いた半導体だという。また、Fab 12A P6には世界の主要顧客8社が生産枠を確保するために資金を前払いしているという。

UMCの2021年10月の連結売上高は、前年同月比25.4%増の191億5859万NTドルとなり、同社の単月ベースの売上高としては過去最高を更新したという。

背景には、28nm以上のマチュアプロセスの生産能力が需要に追い付いていない状況が続いており、売上高を押し上げた。1~10月では前年同期比17.9%増の1,730億7,002万元で、同期の過去最高だった。UMCの第4四半期(10~12月)の売上高は過去最高を更新すると現地アナリストは予測している。ファウンドリの受注価格の上昇が続いていることに加え、生産能力がフル稼働を維持しているためであるという。

半導体不足の元凶は寡占化されたファウンドリにあり

11月26日に開催されたセミコンポータル主催の「半導体不足、解決の決め手は何か」をテーマにしたセミナーで、みずほリサーチ&テクノロジーズの石原範之氏が、「サプライチェーン、各国支援とTSMCの狙い」と題して講演し、TSMCはじめ台湾ファウンドリの寡占化・独占化が世界的な半導体不足の原因になっているとの見解を述べた。

2010年中ごろよりTSMCは設備投資を抑制し、生産量を絞ってきた。このため、売上単価や利益率が上がっている。一方で、研究開発費は毎年増加しており、プロセス微細化競争の先頭を走ってきた。

TSMCが微細化技術競争に勝ち、抜け出したことでここまで寡占が進んだ。UMCなどほかの台湾ファウンドリも成熟プロセス向け設備投資額を減らしてきたため、これにより台湾の主要ファウンドリで供給量が不足してしまったという。

2019年から設備投資は急増しているため、2022年に一旦供給不足は解消に向かうと考えられるが、TSMCやUMCなどの台湾勢による先端製品、レガシー製品両方の寡占状態が続く限り、供給不足の懸念は続くと石原氏は独自の見解を示した。

また、寡占化・独占化が進むと価格が一方的に決められ価格上昇が生じるとともに、価格を維持するために生産量調整が行われるという現象は、フランスの経済学者クールノー氏によって提唱された「寡占市場における企業の戦略モデル」そのものであり、これこそ台湾の主要ファウンドリの狙いであると石原氏は指摘。UMCの再三の値上げ攻勢もこの戦略モデルによるとみられ、値上げしても顧客は注文を継続せざるを得ず、台湾勢に生産委託の注文が集中する限り半導体不足や価格上昇は避けられないという。