金沢大学は12月1日、アルツハイマー病患者の脳に沈着したアミロイドβタンパク質(Aβ)が個体間伝播すると、Aβが脳血管に沈着しやすいことを明らかにしたと発表した。
同成果は、金沢大 医薬保健研究域医学系の山田正仁教授(現・近大名誉教授兼九段坂病院副院長)らの研究チームによるもの。詳細は、神経疾患のメカニズムを題材とした学術誌「Acta Neuropathologica Communications」にオンライン掲載された。
アルツハイマー病の主な原因の1つが、脳内で作られるタンパク質の一種であるAβが脳に沈着すること(脳Ab病理変化)と考えられている。近年、脳Aβ病理変化は、屍体硬膜移植、屍体から抽出した成長ホルモン製剤接種、脳外科手術などの医療行為で個体間伝播する可能性が報告されている。
また、この脳Aβ病理変化は、大脳や小脳や脳幹などの脳実質へのAβ沈着(老人斑)だけでなく、脳血管にも沈着する(脳アミロイド血管症:CAA)こともわかっている。さらに、ヒトにおける脳Aβ病理変化の個体間伝播では、CAAが起こりやすいことが報告されているが、その理由はわかっていないという。
今回、研究チームでは、脳実質へのAβ沈着やCAAの程度が異なるヒト剖検脳をアルツハイマー病モデルマウス脳への接種を実施。その結果、元の脳実質へのAβ沈着やCAAの程度に関わらず、アルツハイマー病モデルマウスではCAA優位の脳Aβ病理変化が確認されたという。
このことは、脳Aβ病理変化が個体間伝播する時には、伝播の元となった患者の脳Aβ病理変化の特徴に関わらず、伝播した先の患者はCAAが起こりやすいことを示すものであり、ヒトの医療行為による脳Aβ病理変化の個体間伝播では、CAAが起こりやすいというこれまでの知見と一致する結果でもあるという。
今回の研究成果を踏まえ研究チームでは、ヒトでの個体間伝播の特徴を再現できていることから、脳Aβ病理変化の個体間伝播のよい実験モデルとなる可能性があるという。そのため今後は、この実験モデルをより詳細に解析することにより、脳Aβ病理変化の個体間伝播の病態解明や予防・治療法開発に寄与することが期待されるとしている。