More-than-Moore半導体市場動向調査会社である仏Yole Développementは、2020年に153億ドル規模であったオーディオ用デバイス市場は、今後、年平均5.8%で成長し、2026年には214億ドルに達するとの予測を発表した。
中でもMEMSマイクロフォン市場は、2020年の14億ドル規模から、年平均10.5%で成長し、2026年には25億ドルに達する見込みだという。また、最大市場であるマイクロスピーカー市場も、2020年の90億ドル規模から年平均3.5%で成長し、2026年には110億ドルとなり最大市場を確保し続けるという。さらに、APU(オーディオプロセッサ)およびSoCは、年平均13.3%と高い成長率により、2026年には39億ドルに達するという。中でも特定のエンドシステム向けのAPUまたはSoC内でのオーディオ処理とAIコンピューティング機能の統合は、大きなトレンドとなっているという。このほか、オーディオ・コーデック用IC市場は、2020年の20億ドル規模から年平均6.2%で成長し、2026年に29億ドルに、オーディオアンプ用ICは、2020年の12億ドルから年平均0.8%で成長し、2026年には13億ドルに達するとしている。
熾烈なトップシェア争いが繰り広げられるMEMSマイク市場
MEMSマイク市場は、ファブレスの中Goermicroと米Knowlesがともにシェア3割台でトップ争いを演じている。Goermicroは、Infineon Technologiesや中国内の新興ファウンドリに製造委託している。Infineonは自らMEMSマイクの設計から半導体製造まで手掛けるキャプティブ(内製)サプライヤであると同時にMEMSファウンドリとして多数の顧客を抱えている。これに対してKnowlesの受託製造を一手に引き受けるソニー(正確にはソニーセミコンダクタマニュファクチャリング 鹿児島テクノロジーセンター)は、MEMSファウンドリに徹している。TSMCに製造委託するTDKのシェアは3%である。そのほかの10%に含まれる新日本無線(JRC、2022年1月より日清紡マイクロデバイス)は、自社で設計から製造まで行っている。
オーディオ・コーデックおよびアンプ用ICでは、米Cirrrus Logicが48%とぽぼ半分のシェアを握っており、Qualcommが18%、NXP Semiconductorsが12%、MediaTekが10%と続く。オーディオ処理とAIコンピューティング機能の統合により、QualcommやMediaTekなどの大規模プレーヤーによって提案されたAPU/SoCのシェアが増加している。
Yoleによると、コンシューマ機器向けMEMSマイク、マイクロスピーカー、オーディオコーデック、アンプ、およびスマートスピーカー、TWSイヤフォン、オーディオヘッドセットなどのAPUとSoCの市場は、米国から成長する可能性が高いとしている。また、自動車は、マイクやいくつかのオーディオコンポーネントが採用されているが、そのドライバとしてハンズフリーを実現する音声対話が進みつつあることが挙げられる。また、もう1つの重要なアプリケーションとして、アクティブノイズコントロールを使用することで、車内のノイズを積極的に低減する「RANC(Road-noise Active Noise Control)」への注目度合いも増加してきているという。
なお、日本がかつてオーディオIC大国であったことを知る人も今では少なくなってしまった。かつてソニーは、自社のラジオ事業部門やオーディオ部門向けキャプティブサプライヤとして出発し、他のオーディオ機器サプライヤにも外販していた。ヤマハ、パイオニア、クラリオンなどのオーディオ機器メーカーが、自社のオーディオ用半導体工場や半導体研究所を設置していた時代もあった。