横浜国立大学(横浜国大)は、不燃性で安全な水系電解液と、独自開発の岩塩型モリブデン系酸化物負極材料を組み合わせることで、従来の可燃性の有機溶媒を用いるリチウムイオン電池と同等の長寿命を実現する安全・安心なリチウムイオン電池の開発に成功したことを発表した。
同成果は、同大 工学研究院の藪内直明 教授らの研究チームと、ミュンヘン工科大学、物質・材料研究機構、住友電気工業らによるもの。詳細は米国国際科学雑誌「PNAS」に掲載された。
さまざまなシーンで活用されるようになったリチウムイオン電池だが、発火の危険性があることが知られており、より安全なリチウムイオン電池技術の確立が求められるようになっている。そうした技術の1つとして、不燃性の水を電解液として用いる水系リチウムイオン電池の実用化が期待されているが、充電時に水が分解されるため、高エネルギー密度化と実用電池として実用可能な寿命を両立することができないという課題があった。
そこで今回の研究では、水系電解液の分解を抑制できる電圧範囲で高容量を示すという特徴を有する岩塩型のモリブデン系酸化物材料を開発。100Wh kg–1を超えるエネルギー密度に加え、2000サイクル後でも初期容量の70%以上を維持可能という、従来の可燃性有機溶媒を用いるリチウムイオン電池と同等の寿命を実現できることを確認したという。
なお、研究チームでは、今回の成果について、自然エネルギーの貯蔵に利用する超大型蓄電池システムへの応用が期待できるとしている。