資生堂は11月17日、「資生堂 R&D戦略発表会」を開催し、研究開発理念の発表や新しい研究成果の発表などを行った。
資生堂チーフブランドイノベーションオフィサーの岡部義昭氏は「競合他社とは異なる資生堂の唯一無二の強みを考え、“DYNAMIC HARMONY”を研究開発理念として制定しました」とした。
DYNAMIC HARMONYとは一見相反する価値や両立が難しい価値を融合し、唯一無二の新たな価値を生み出すという資生堂独自のR&Dの考え方を同社の強みとして再定義したもので、「Inside/Outside(肌の内/外)」「Science/Creativity(科学/感性)」「Premium/Sustainability(プレミアム/サステナビリティ)」「Individual/Universal(個/普遍)」「Functionality/Japan Quality(機能性/日本品質)」という5つの柱で研究アプローチを進めていくという。
そして、Premium/Sustainabilityの観点からの“紫外線による脅威を恵みに変える”新しい研究成果として同社未来開発研究所主幹研究員の宮沢和之氏とブランド価値開発研究所研究員の渡辺百合香氏から「紫外線を肌に良い作用をもたらす光へと変換する技術」という研究成果が発表された。
資生堂はこれまでの研究で、紫外線は酸化ストレスを肌に与え、光老化の原因の1つになることや、太陽光強度のブルーライトが肌にダメージを与えること、赤外線によって産生される熱が肌内部にダメージを与えることなどを解明してきた。
今回、紫外線から逃れるだけでなく、その恵みを生かして、共により良く生きることを目指し、肌に有害な紫外線を有益なものに変えるという発想のもと、新たな技術開発を行ったという。
同研究では、“光合成”に着目。光合成は太陽の光を利用してエネルギーを生み出すが、そのプロセスの中で太陽光を可視光へ変換している。
そこで、紫外線を別の光に変換することで、肌に有益な効果を与えられないかと考え、紫外線を吸収し、それを異なる光エネルギーとして放出させる特性をもつ物質の探索を行い、400種類以上の原料の中から、十分な光の強度や安定性を有し、安全性の高い、Spirulinaエキスと蛍光酸化亜鉛を発見したという。
蛍光酸化亜鉛とSpirulinaエキスが紫外線を吸収し、波長を変えて光を放出することで 肌に良い影響を与える光として、肌に届けるというメカニズムとのことだ。
肌のハリなどに重要なコラーゲンやヒアルロン酸を産生している真皮細胞(線維芽細胞)は、紫外線を浴びるとダメージを受けて、その産生が衰えることがわかっている。今回、Spirulinaエキスにより紫外線を可視光(美肌光)へ変換することで、紫外線によりダメージを受けた真皮細胞の活性が回復し、紫外線照射前よりもコラーゲンやヒアルロン酸の産生が高まることを確認したとしている。
また、蛍光酸化亜鉛によって放出される光は、Spirulinaエキスが発する光よりも波長が短いことから、肌の表面に作用を及ぼし、紫外線によりダメージを受けた表皮細胞の活性が回復することを確認。これは、美肌光により、肌のバリア機能が回復する可能性を示唆しているという。
そして、Spirulinaエキスと蛍光酸化亜鉛を組み合わせた場合の効果についても検証を実施。
紫外線を浴びた皮膚の細胞からは炎症因子が放出され、肌に赤みとなって現れる。炎症を繰り返すと、長期的には肌の光老化に繋がることがわかっているが、今回2つの原料を組み合わせて紫外線を可視光(美肌光)へ変換することで、炎症を抑えて肌の赤みを抑制することに成功。これは、美肌光が炎症因子による光老化を防ぎ、健やかで美しい肌を維持する作用があることを示唆しているという。
同社はこの技術を、紫外線によるダメージの防止と美容効果のある“美肌光”によるスキンケア効果を同時にかなえる「SunDualCare」として実用化に向け、研究を行っていくとしている。