堺市と堺市産業振興センターは11月18日、オープンデータを活用した取り組みの一環として、企業データベースを活用した堺市内企業ポータルサイト「SAKACIL(さかしる)」を同月25日よりオープンすると発表し記者説明会を開いた。

オープンデータは国や地方公共団体、事業者が公開している情報であり、「営利・非営利に関わらず二次利用が可能なもの」「機械判読に適したもの」「無償で利用できるもの」といった条件によって規定される。堺市では同市内にある約2万4000企業の情報をオープンデータ化することで、各企業の情報受発信とデジタルツール活用の支援を目的に「SAKACIL」を構築したとのことだ。

  • 「SAKACIL」のサービスイメージ

説明会の冒頭に、堺市産業振興センターの経営支援課で課長補佐を務める小松浩史氏が「新型コロナウイルス感染症の拡大によって中小企業が抱える課題が急速に浮き彫りになった。営業活動において販路の維持が困難となる中で、行政からの支援は今後も重要であることが予想される。また、今後の経営の転換を考えている企業も少なくないため、デジタルツールを活用したビジネスモデル変革が求められており、これを支援したい」と、サイト構築に至った背景を述べた。

  • 堺市産業振興センター 経営支援課 課長補佐 小松浩史氏

堺市内の企業のうち、自社のWebサイトを持たない企業は約9割にも上るという。また、デジタル化に取り組んでいない企業が約4割であるとする調査結果もあるとのことだ。その背景には、「ノウハウを持つ人材が不足している」「自社での活用イメージを持てない」「コスト負担が大きい」といった理由があるようだ。

  • 企業の約4割がデジタル化に取り組んでいないと回答 資料:堺市「市内中小企業者の持続的発展に向けたアンケート調査」

こうした現状を受けて堺市産業振興センターでは、行政と市内企業が一緒に企業データを使って育てるオープンデータ・ポータルサイトとして「SAKACIL」を構築した。

同サイト上において、市内の企業は自社情報を登録することで容易に情報発信が可能となる。これにより、新たな取引先の発掘やビジネスの拡大が図ることができるほか、企業データの利活用によるイノベーションの創出も期待できるという。また、自社のWebサイトを持たない企業でも、行政機関が管理するプラットフォーム上に無料で自社サイトを掲載できる点もメリットとなる。

  • 「SAKACIL」を利用した取り組みの概要図

一方、堺市は同サイト上に中小企業支援施策情報を掲載する。この中から、自社情報を入力した企業ごとに適した支援策がプッシュ通知されるため、支援策の有効活用にもつながる。

サイト上に掲載される情報はオープンデータであるため、そのデータを利用したい他企業や他サイトでの利活用も見込まれる。これにより、従来以上の取引拡大も狙えるという。なお、各企業の基本情報はgBizINFO(政府保有の法人情報を法人番号にひもづけてデータを整理し、2次利用可能なオープンデータとして情報提供するサイト)にひもづくとのことだ。12月上旬より市内各企業へ情報登録の案内を配布する予定だ。