日本マイクロソフトは11月17日、政府・官公庁・自治体に向けたクラウドサービス導入・利用促進の最新の取り組みや今後の注力分野・変革を進める政府・官公庁・自治体の最新事例など、政府・自治体のデジタルトランスフォーメーションにおける取り組みを紹介する説明会を開催した。

日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 デジタル・ガバメント統括本部長 木村靖氏は冒頭、グローバルでの同社のクラウド利用について触れ、FY21 Q2のグローバルにおけるクラウド利用は前年同期と比較して、Azureは50%増、Microsoft 365は21%増、Dynamics 365が39%増で、日本の場合はAzureはこれより伸びており、Microsoft 365はグローバルの伸びの3倍増だという。

  • FY21 Q2のグローバルにおけるクラウド利用の伸び(前年同期比)

コロナ禍でのこの1年の変化では、パンデミック対応のためのクラウドによる迅速なシステム導入、SIベンダーによるローコード開発が進み、アジャイル開発がキーワードになっているという。

また、中央官庁・自治体分野でのWeb会議やテレワーク環境の浸透、ハイブリッドワークが加速しており、デジタル庁誕生によるデジタル変革機運の高まりがあるという。

「Web会議やテレワーク環境の浸透によって、周りの部分のオンライン化が必要になってくる。そのため、アジャイル開発、ローコードがキーワードになり、迅速なシステム導入、アプリケーションの提供が要望として出ている」(木村氏)

  • 日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 デジタル・ガバメント統括本部長 木村靖氏

その上で同氏は、政府、自治体向けの戦略は、昨年11月発表の「オンラインでの行政へのアクセス」、「縦割り行政の打破のためのコラボレーション」「信頼されセキュアな環境の提供」の分野に注力してくことに変わりないとし、「Microsoft 365を中心に、Teamsのプラットフォームを使うケースが増えてきた。今後は、ニーズとしてハンコや紙、FAXをデジタルワークプレイスと連携して一気通貫のオンライン環境を構築することが課題になってくる。また、データを活用し可視化していきたいというニーズも増えているので、データ連携基盤や横断的なコミュニケーション基盤が重要になってくる。基盤であるクラウドがセキュアな環境でなければならないという3点は引き続き注力していきたい」と語った。

  • 政府、自治体向けの注力分野は昨年発表と同様

そして、政府、自治体のDXの取り組み事例として、経済産業省の「gBizFORM」と、金沢市のDX推進人材育成を紹介した。

経済産業省では、「gBizFORM」という行政手続きの電子申請のためのプラットフォーム整備を、マイクロソフトのPower Platformを活用し、職員自らが開発を行っているという。

  • 「gBizFORM」のトップ画面

ローコード開発により、ITの専門知識がない職員でも行政手続きを自分たちでデジタル化できるようにしており、これは、急な方針転換に柔軟に対応するためにだという。

同省では、成功のためには職員にスキルを習得させ、維持させていくことと、やる気のある職員にアーリーアダプターとして成功事例をつくってもらい、それによって自分もできる思ってもらうことが重要だと考えているという。

今後は、データが貯まってきたらデータを分析して政策に活かしていくという。

また、金沢市は、2019年の3月にICT推進計画の策定、2021年3月にデジタル戦略を策定し、市長自らが推進役のトップに立ち、デジタル人材育成に取り組んでいる。同市はこれにより、職員の資質向上により生産性を高めようとしている。

  • 金沢市のデジタル人材育成について説明する山野市長

同市は約2000人の全職員に対して、動画やEラーニングなどによって、2年間のデジタル研修を行いスキルアップを行うほか、うち100人をその部署のデジタル推進リーダーに育てるため、200時間の研修を実施するという。さらに、40人をDXアドバイザーに育てようとしている。

マイクロソフトは同市のデジタル人材育成支援を行い、5年後に目指すデジタル人材像の作成、そのために必要なスキルとは何か、変革のコンピテンシーの洗い出し、デジタル研修プログラムの作成、デジタル研修、マインドセット講習などの講師を務める等の協力を行っている。

マイクロソフトでは、こういった取り組みを他の自治体にも広げていくという。

そして同社は新たな施策として、地方自治体のDXをスタートアップとともに支援する新たなプログラム「Microsoft Enterprise Accelerator GovTech」の推進や、デジタル庁向け専任チームの活動を行うという。

Microsoft Enterprise Accelerator GovTechでは、自治体を支援するために、スタートアップとの協業により人工知能など最新のテクノロジー導入を支援し、パートナエコシステムを構築。共同提案、セキュアなクラウドサービスの提供、共同マーケティングを行っていくという。

  • Microsoft Enterprise Accelerator GovTech

一方のデジタル庁向け専任チームでは、マイクロソフトの海外政府DX事例・ノウハウの展開、日本・米国本社によるサポート・開発体制の確立、AI等の最新テクノロジー・技術 ワークショップの実施、GitHubによる内製化、アジャイル開発支援を行っていく。

  • デジタル庁向け専任チームの支援

政府の情報システムおける共通的な基盤・機能を提供するクラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS)の環境であるガバメントクラウドの調達に対してして木村氏は、サーバを他と分離する、マイクロソフト自身が直販する(これまではパートナーによる間接販売のみ)など、政府の要求に対して柔軟に対応していきたいと述べた。