データは「21世紀の石油」とも言われており、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に伴い、今後ますますデータの活用が推進されることが予想されます。そこで本稿では、企業のデータ戦略の重要性、企業がデータ分析基盤を検討する際のポイントを紹介します。
企業はなぜデータドリブンでなければならないか
デジタル時代において、すべての企業が変化の先を行き、競合他社に差をつけるためには、データドリブンであることが必要です。これには2つの意味があります。
1つは、企業のデータ戦略は組織全体で取り組み、経営会議で承認を得て組織のビジネス戦略に組み込む必要があるということです。もう1つは、組織が真の意味で「データドリブン」になるためには、IT部門以外の従業員も含めたすべての従業員が、関連性のある質の高いデータにアクセスしてタイムリーに利用できるようにする必要があるということです。これにより、従業員は適切な情報から洞察を得て、自信を持ってイノベーションや創造的なソリューションを提案できるようになります。
イノベーションは分散し、組織全体に浸透している必要があります。シニアリーダーに割り当てたり、専門のグループに集中させたりするのではなく、組織の文化の中で不可欠なものにする必要があります。
Clouderaは、組織内でイノベーションが分散することにより、データやアナリティクスの取り組みから得られる生産性が向上すると考えています。DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として、企業はビジネスの目的に沿ったデータ戦略を明確にする必要があります。これにより、データを活用して、既存の技術を新しい方法で組み合わせたり、既存の技術を別の領域に適用して別の問題を解決する「アップサイクル」を行ったりして、イノベーション活動を推進することができます。
これらを実現する上では、データサイエンティストだけでなく、すべての従業員がデータリテラシーを身につけ、関連するデータにアクセスして閲覧できるようにすることが重要になります。分散型のチームには、さまざまなビジネスの「現場」にいる人たちが参加しています。ITチームに比べて、彼らは収集したデータの文脈をより深く理解しており、その企業に特化した実用的なインサイトを考え出すことができるでしょう。そのため、彼らの経験や知識とデータ分析を組み合わせることで、独自の価値を生み出すことができるのです。また、データへのアクセスが増えれば、これまで見えていなかったデータの相互作用を明らかにするための共同作業も増えるでしょう。
しかし多くの場合、邪魔になるのは、適切なデータを適切な人に適切な時間に瞬時に提供するなどの新しくかつ厳しい要件をサポートできないレガシーなデータシステムです。企業がDXを進めるには、データサイロを解消し、ビジネスプロセスからより鋭いインサイトを得ることが必要です。
すべての従業員がデータを分析できるツールの要件
一方で、データを解釈、理解、操作する能力に自信がないと、データの使用を躊躇してしまいます。企業の従業員の多くは技術者ではないので、データから真の価値を引き出すには、データライフサイクルのあらゆる段階でアナリティクスを利用できるよう、適切なデータ管理プラットフォームとツールが不可欠です。
プラットフォームやツールは使いやすいだけでなく、技術者ではない従業員でもデータを抽出、分析、提示できるようにするために、以下の3つの点を満たす必要があります。
セルフサービス型のデータ分析
これらは、自然言語によるクエリやビジュアルデータディスカバリーなどの使いやすい機能を提供します。これらの機能により、ユーザーはデータ分析チームのわずかなサポートで、複雑なデータ分析を行い、データを可視化することができます。そのため、時間とリソースをシステムの構築やメンテナンスではなく、洞察や分析のために使うことができます。
ローコード、ノーコードのツール
テクノロジーの進歩により、エンドユーザーがGUIやドラッグ&ドロップ・モジュールなどのユーザーフレンドリーな機能を使って機械学習モデルを構築できるツールが登場しました。これにより、エンドユーザーはデータサイエンティストの助けに頼る必要がないため、迅速にソフトウェアを提供できるようになります。
データのプライバシー、ガバナンス、セキュリティ
どんな環境下でも 企業のデータプライバシー、ガバナンス、セキュリティを厳格に維持するために、適切なポリシーを導入することが重要です。
多くの大企業では、ITインフラにハイブリッド環境を採用しているか、採用に向けて動き出しています。オンプレミス、プライベート、およびパブリッククラウドのインフラを組み合わせているため、ITチームが必要なデータにアクセスするために、これらのハイブリッド環境のすべてのAPIを習得することは不可能です。
スピードを重視する場合、データの民主化に取り組む最善の方法の1つは、Cloudera Data Platform(CDP)のようなクラウドベースのデータ分析基盤を採用することです。データ分析基盤はパブリック・クラウドやプライベート・クラウドで動き、複数のアーキテクチャと統合することが可能で、データのライフサイクル全体にわたってビッグデータの管理と分析の体験を提供します。また、安全性、コスト効率、拡張性に優れた方法で、企業にクラウドネイティブなアナリティクスを提供することができます。
例えば、フィリピンのモバイル通信収入の50%以上を占めるGlobe Telecomは、Clouderaのデータウェアハウスを活用して600PBのデータを管理し、1年間で66%のモバイルデータ量の増加をサポートしました。Cloudera Data Platformは、膨大な量かつ粒度の高いネットワーク信号情報をリアルタイムで集約し、それを請求システムや決済などの他のソースからのデータと組み合わせることで、同社が顧客セグメンテーションを強化し、より良いモバイル体験とより効果的な広告を提供できるようにしました。
データでビジネスの可能性を引き出す
デジタル企業にとって最も価値のある資産と言われるデータは、効果的に管理・活用することで、ビジネスの可能性を大きく広げることができます。
優れたクラウド戦略と健全なデータ戦略に基づくDXにより、企業はデータを活用して洞察力を高め、スピード感を持って新規市場に参入することができます。
データ戦略においては、プラットフォームやワークロードにまたがるすべてのデータを集約し、データのライフサイクル全体を管理するとともに、ユーザーが生データをデータ・ビジュアライゼーションによって実用的なインサイトに変換できるようにする必要があります。企業はデジタル経済におけるデータ関連の複雑さをうまく回避し、データによって変革の旅を加速させることができるようになります。
著者プロフィール
Cloudera株式会社 社長執行役員 大澤 毅
大手独立系メーカー、大手SI、外資系 ITにおいて要職を歴任。 大企業のマネジメント経験、数々の新規事業の立ち上げを通じ、個社を超えて全体像を構想し新しい価値を社会に創出する「共創イノベーションのリーダーシップ」が求められていると実感。一般社団法人 グラミン日本のアドバイザリーとして、Social Recruiting Platform事業推進に取り組む。SAPジャパン株式会社 SAP Fieldglass事業本部長を経て、2020 年9 月14日より Clouderaの社長執行役員に就任。データ活用を奨励し、日本市場のお客様とパートナー企業のビジネス変革を支援している。