スーパーコンピューターの計算速度の世界ランキング「TOP500」が米セントルイスで開かれた国際会議で発表され、理化学研究所の「富岳(ふがく)」が1位となり、昨年6月以降の4連覇を達成した。他の3つのランキングでも4回連続トップとなり、4冠を保ち実力の高さを裏付けた。
TOP500は性能評価用プログラムの処理速度を競うもので、年2回発表されている。日本時間16日未明に発表された最新版で、富岳は前回の今年6月と同じ毎秒44京2010兆回(京は1兆の1万倍)となり、2位の米国「サミット」の約3倍の性能をみせた。日本は先代「京(けい)」が2011年に連覇した後、中国や米国の後塵を拝していたが、昨年6月、富岳で8年半ぶりに首位となった。
産業利用に適した計算の速度を競う「HPCG」、人工知能(AI)の深層学習に用いられる演算の指標「HPL-AI」、グラフ解析の性能を競う「Graph(グラフ)500」でも、今年6月までに続きそれぞれ大差で1位に。多分野での優位性を示した。
2010年代を通じ、各国が毎秒100京回に相当する1エクサフロップス(エクサは10の18乗)の演算ができる次世代「エクサ級スパコン」の開発を目指してきた。富岳は本格稼働前の昨年6月、HPL-AIで世界初の1エクサフロップス超を達成。その後、フルスペックとなり2.004エクサフロップスに到達した。TOP500は発表のハイライトで「富岳はしばしば、初の“エクサスケール”スパコンと説明される」と特筆した。
一方、エクサ級に到達したとみられるものの、TOP500に報告されていない中国のスパコンが複数存在することにも言及している。
富岳は理研と富士通が共同開発。理研計算科学研究センター(神戸市)の京の跡地に設置され、今年3月に本格稼働した。昨年4月からの試験利用では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で成果を上げた。文部科学省「成果創出加速プログラム」のほか、一般公募や国の重要課題での利用などが始まっている。
松岡聡センター長は「富岳は圧倒的に世界一になるだけでなく、デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル技術の浸透により人々の生活を豊かにすること)をもたらすともみなせる成果を上げてきた。今後も幅広く(政府が提唱する超スマート社会)Society(ソサエティー)5.0や、SDGs(国連の持続可能な開発目標)、脱炭素社会の実現に貢献できるよう高度化、発展させていく」とコメント。富士通の新庄直樹理事は「世界一の性能が利活用され、科学技術の発展と安心、安全な社会の実現に貢献できることを期待している」とした。
TOP500のランキング上位は次の通り(名称、設置組織、国、毎秒の計算速度)。
1位 富岳 理研計算科学研究センター(日本)44京2010兆回
2位 サミット オークリッジ国立研究所(米国)14京8600兆回
3位 シエラ ローレンスリバモア国立研究所(米国)9京4640兆回
4位 神威太湖之光 無錫スパコンセンター(中国)9京3014兆回
5位 パールマッター 国立エネルギー研究科学計算センター(米国)7京870兆回
※以下、日本勢上位
16位 ABCI2.0 産業技術総合研究所 2京2208兆回
17位 ウィステリア・ビーデック01(オデッセイ) 東京大学 2京2121兆回
31位 トキ・ソラ 宇宙航空研究開発機構 1京6592兆回
関連記事 |