大阪市立大学(大阪市大)は11月12日、従来法よりも量子ゲートの並列実行性に優れ、量子コンピュータ実機への実装が容易になることが期待できる、原子・分子の全エネルギーを計算する新規量子アルゴリズムを開発したと発表した。
同成果は、大阪市大大学院 理学研究科の杉﨑研司特任講師、佐藤和信教授、工位武治名誉教授らの研究チームによるもの。詳細は、物理および化学を題材とした学術誌「The Journal of Physical Chemistry Letters」に掲載された。
量子コンピュータによる「全配置間相互作用法(full configuration interaction:full-CI)」の計算に用いられる量子位相推定アルゴリズムは、波動関数を時間発展させると、全エネルギーに依存した速さで波動関数の位相が変化する事象を利用したもので、従来手法では演算の条件によっては量子ゲートの並列処理がしにくいという欠点があり、その課題解決が求められていたという。
同研究チームはこれまでに、原子・分子の任意のエネルギー差を直接計算でき、量子ゲートの並列処理に向いている「量子位相差推定」アルゴリズムを提案済みであり、今回の研究では、これを応用し、制御-時間発展演算子を使わずに原子・分子のfull-CI計算を実行できることを示すことに成功したという。
なお、この手法は、量子ゲートの並列処理がしやすくなることが特徴なほか、物理的に隣り合わない2つの量子ビットに作用する2量子ビットゲートの数も減らすことができ、従来法よりも量子コンピュータ実機への実装が容易になると研究チームでは説明している。