サムライインキュベートは11月10日、5G(第5世代移動通信システム)を活用したソリューションなどの街中実装、事業化を推進するアクセラレータープログラム「GO BEYOND DIMENSIONS TOKYO」を発表した。同日には記者発表会が開催され、プログラムの事業概要や方針、今後の展望が明かされた。
同プログラムは東京都が推進する「5G技術活用型開発等促進事業」の一環となるアクセラレータープログラムとなり、スタートアップから募集した事業アイデアを基に、さまざまな5Gソリューションの街中への実装を目指すものだ。5Gソリューションの実装・実証エリアは東京となる。
同プログラムでは、施設・インフラ・モビリティなどをはじめとした、リアルな実証フィールド・アセットを東京に有している複数の大手企業が「街中実装パートナー」として参画する。5Gソリューションの出口となる大手企業のアセットを活用することで、スタートアップの成長支援を加速させ、ニーズ起点の実用性・実現性の高い5Gイノベーションを推進するねらいだ。
街中実装パートナーには、京浜急行電鉄、ジェイアール東日本都市開発、清水建設、三菱地所の4社が参加している。
また、テクニカルパートナーにはアマゾン ウェブ サービス ジャパンとクアルコムジャパンが参画。両社は最先端の5G技術やその周辺技術・サービスを以って、スタートアップの開発・実証を技術面でサポートする。
「5G技術活用型開発等促進事業」の開発プロモーターであるサムライインキュベートは、大企業とスタートアップの事業マッチングやモデル策定、事業化に必要な開発費・実証費(500万円)の負担、スタートアップへの最低週1回のメンタリングといったハンズイン支援を実施する。
サムライインキュベート Enterprise Group Directorの山中良太氏は、「本プログラムの特徴は、生活者視点に立ち快適な街づくりにつながる5Gソリューションを実装していく点にある。当社はカスタマイズ型の事業化伴走支援を行い、スタートアップの事業アイデアと街中実装パートナーの課題感を捉えて、共創事業モデルの構築をサポートする」と語った。
同プログラムは最長で3カ年度実施される。第1期は2021年11月10日から2021年12月10日までをスタートアップの応募期間として、2022年1月中旬に採択したスタートアップによる事業を発表。開発・実証を経て、2022年の夏ごろに成果を発表する予定だ。
第1期で募集する事業テーマは、TOKYO戦略的イノベーション促進事業や令和3年度イノベーションマップで東京都が重視する開発テーマをもとに、以下の5つが挙げられた。
- 想定外の災害が来ても、 被害が最小限に抑えられる社会の実現
- 自動的に安全なインフラが保たれる社会の実現
- 多様な障害に合わせ、 日々バリアフリーがアップデートされる社会の実現
- 「混雑」に頼らない観光・地域交流コミュニティが育まれる社会の実現
- どこでもラストワンマイル物流が持続可能となる 社会の実現
記者発表会では、街中実装パートナーの4社からも同プログラムへの意気込みが語られた。
京浜急行電鉄は「モビリティを軸とした豊かなライフスタイルの創出」を事業ビジョンに掲げる。同社 広報・マーケティング室 主査の羽根一貴氏は、「デジタル・テクノロジーによって、移動自体を便利にしていくことのみならず、その目的となる、多彩で豊かな顧客体験を生み続けていくことを目標にしたい。あるいは、時代やニーズを捉えた顧客体験を、モビリティを軸として統合し、これまでにない新たなライフスタイルを提供するような事業を期待したい」と述べた。
ジェイアール東日本都市開発は、同社が中期経営計画で掲げる「変化を捉え、あったらいい・ちょうどいい『まちとくらし』を提案します。」に適う事業の創出に期待する。同社 常務取締役 経営企画部長の桑原健氏は、「例えば、当社が保有するJR東日本の首都圏高架下の店舗・ショッピングセンターからのドローン宅配の活用や、火災防止・雨漏れ・故障防止のための、5G技術を活用した火災、トラブルなどの未然防止ツールが挙げられる」とした。
清水建設は、これまで海外スタートアップと協業してデジタル戦略を推進してきた実績を生かす方針だ。同社は建物オペレーティングシステムの導入やニューノーマル時代の新しいオフィス「SHIMZ CREATIVE FIELD」の提案、高測位精度を持つ位置情報システムを活用した新しい働き方のデジタルプラットフォームの提供を行ってきた。
「当社はすでに5Gに関連するデジタル技術活用の取り組みを進めている。スタートアップ企業からの技術導入・国内マーケット向けのローカライズなど、当社独自技術と組み合わせたサービス事業を展開していきたい」(清水建設 フロンティア開発室ベンチャービジネス部 主査 加藤大輔氏)
三菱地所は、同社が掲げる「三菱地所デジタルビジョン」で示すオンラインとオフラインが融合する新しい暮らしとまちづくりに関連して、保有・管理する施設のほか、2021年から2022年11月の間に整備する予定のローカル5G環境を実証プログラムで提供する。
同社 管理・技術統括部 統括の花岡大輔氏は、「ローカル5G通信環境はSub6・SA構成となり、実証では専用の5G端末(SIM込み)を貸与する予定だ。丸の内エリアの実際に利用されている場にローカル5Gを整備することで、生きた環境でさまざまな実証実験を行いたい」と説明した。