国際宇宙ステーション(ISS)で6カ月半の滞在を終えた星出彰彦さん(52)ら4人の飛行士を乗せた米スペースX社の宇宙船「クルードラゴン」が日本時間9日午後、米フロリダ州ペンサコーラ沖に着水し、地上に無事帰還した。星出さんは滞在中に日本人2人目のISS船長を務めたほか、自身4回目となる船外活動、各種の実験を行うなど精力的に活動した。
星出さんはISSに滞在を続ける米露3人の飛行士と別れを惜しんだ後、米仏の3人とクルードラゴンに搭乗。9日午前4時5分頃、高度約400キロにあるISSから離脱した。その後、クルードラゴンとしては初めて、ISSの周りを1周してISSの外観を撮影する「フライアラウンド」を行った。徐々に降下して大気圏に突入。パラシュートを開いて午後零時33分に着水した。
星出さんらはISS到着時と同じクルードラゴンの本格運用2号機に搭乗。飛行士が乗るカプセル部分は昨年5~8月の有人試験飛行で使ったもので、同社は無人の物資補給機「ドラゴン」に続き宇宙船の再利用を実現した。
星出さんは2014年の若田光一さん(58)以来、日本人2人目のISS船長を4月28日~先月5日に務めた。現場責任者として飛行士を統括し、船内の状況や活動を把握するなどの重責を果たした。
在任中の7月29日、ロシアの新たな多目的実験棟「ナウカ(科学)」が到着し結合したものの、3時間後にナウカのエンジンが予期せず噴射しISSが540度も回転するトラブルが発生した。一時はISSが姿勢制御不能に陥り、米航空宇宙局(NASA)が緊急事態を宣言。係留中の物資補給機のエンジンを噴射するなどして、復旧した。
このできごとについて、星出さんは先月28日、地上と中継を結んだ会見で「私は全体をみながら、地上の管制チームと『通信が途絶えるまでにここの部分はやってほしい』などとやり取りをした。全員が対応に追われ、それぞれが自分の持ち場を認識しテキパキ動いた」と緊迫した対応を振り返った。
船長の任務を振り返り「心掛けたことはコミュニケーション。飛行士や地上との間でのやりとりをフランクにできる環境や、働きやすい環境作りを意識した。皆でよく笑ったことが印象に残っている」と語った。
星出さんは9月12日夜から13日未明にかけ、フランス人飛行士と船外活動を行い、太陽電池パネルの取り付け準備作業などを行った。星出さんの船外活動は4回の累計で28時間17分となり、野口聡一さん(56)を抜き日本人最長となった。
日本実験棟「きぼう」で、宇宙での野菜の大量栽培につながる「袋型培養槽」の実証実験、哺乳類の受精卵が無重力で分化するか調べる実験、タンパク質の試料を船内で解凍して結晶化させる実験などに従事した。学校のICT(情報通信技術)環境の整備に取り組む政府の「GIGA(ギガ)スクール構想」の一環で、全国の子どもたちに双方向の講座も実施した。
ISSでは先月、ロシアの映画監督と女優を迎え、史上初の宇宙での本格的な映画撮影も行われている。
日本人のISS長期滞在は来年にも若田さん、2023年頃には古川聡さん(57)がそれぞれ決まっている。日本の民間人2人が宇宙旅行のため今年12月にロシアの宇宙船「ソユーズ」でISSに向かい、短期間滞在する計画もある。
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