米Nianticは11月8日(現地時間)、同社が"リアルワールドメタバース"と呼ぶAR(拡張現実)/MR(複合現実)体験を構築するためのプラットフォームとアプリ開発キット「Niantic Lightship ARDK」の提供を開始した。Lightship.devから利用できる。
"メタバース"に関して、Nianticは現実から切り離された仮想世界には、現実からの逃避や目に見えない分断を生み出すようなリスクがあるとし、現実の世界とデジタルの世界がつながるテクノロジーを起点に発展させる「リアルワールドメタバース」を提唱していた。Lightshipは、同社が「Ingress」、「Pokémon GO」「Pikmin Bloom」といったモバイルゲームを開発・運営してきた経験と技術を蓄積して構築した。Nianticのゲームの基盤である。Lightship ARDKを通じて、開発者はLightshipプラットフォームを利用したリアルでユニークなAR体験をモバイルデバイス(iOS、Android)ユーザーに提供できる。
Lightship ARDKは、リアルワールドメタバースのAR処理に必要な以下の3つのコア機能のためのツールや技術を提供する。
- Real-Time Mapping (リアルタイムでの現実世界の再現):スマートフォンのカメラセンサーを利用して深度を読み取り、リアルタイムに3Dメッシュマップを作成、ユーザーの周囲の地形や地表を把握する。バーチャルのボールが壁を越えたら見えなくなるように、仮想のオブジェクトと現実のオブジェクトの位置関係を正しく表示する。
- Understanding (環境の理解):コンピュータービジョンによる機能で、地面、空、水、草原、建物など環境中のさまざまな要素を識別。デジタルオブジェクトを現実世界の物体の表面と正しくインタラクトさせる。
- Sharing (体験の共有):最大5人のプレイヤーを同時にサポートするARセッションを作成。バーチャルコンテンツ、プレイヤー、それらのインタラクションをリアルタイムに同期させる。
Lightship ARDKは2022年の4月末までは無料で使用でき、同年5月1日からMAU(月間アクティブユーザー数)をベースにした料金設定になる。アプリごとに50,000人以下までは、MAUあたりのデータ伝送量50MBまで無料。50,000人を超えると5ドル/月(10,000ユーザー)。他の機能やツールは引き続き無料で利用できる。
集英社、英国の非営利組織Historic Royal Palaces、英Science Museum Group、米国のPGA、Coachella、TRIPPなどがプライベートベータプログラムに参加しており、Nianticが8日に行ったオンライン配信の発表イベントでパートナーが構築しているユニークなARサービスの一部を公開した。例えば、集英社はモバイルデバイスとARを使って、「ワンピース」など人気漫画のキャラクターを現実世界に取り込んでいる。同社は2022年以降にARアプリをリリースする予定。