京セラは11月8日、自社開発の触覚伝達技術「HAPTIVITY」と、フィンランドTectoTekの電子部品を搭載した基板を3D射出成形でカプセル化する技術「IMSE」を融合させた複合技術「HAPTIVITY i」を開発したことを発表した。
薄く、軽くを実現するIMSE
IMSEは、Injection Molded Structural Electronicsの略称。一般的にはIME(In-Mold Electronics)の名称で、電子回路が描画されたフィルムを3D成形したものと樹脂を一体成形する技術として知られるもの。フィルムインサート成形(FIM:Film Insert Molding)とも呼ばれる。IMSEは2枚の加熱成形用のフィルムの間に回路パターンを印刷で構成、各種実装部品を搭載した後、樹脂でそれを埋めることで、複数部品を組み立てる手間を省きつつ、薄く、軽く、高強度な一体成形の筐体を実現できるといった特徴がある。これにより、製品厚みを最大95%、重量を80%削減できると京セラでは説明している。
IMSEについては、京セラが2021年4月にTectoTekより技術ライセンスを取得。TectoTekに試作を委託することなく、京セラが設計から試作、量産まで対応することが可能となった。また、2021年末から2022年春にかけて野洲工場に試作ラインを構築する計画としている。
押す感触を実現するハプティクス「HAPTIVITY」
一方のHAPTIVITYは京セラが2008年ころから開発してきたハプティクス技術の1つ。タッチパネルながら、ボタンを押した際のような感触を再現することができることを目的に開発された。
具体的には、圧電(ピエゾ)素子と金属板バネを組み合わせた圧電アクチュエータを開発。制御コントローラと連携することで、押し込み荷重をコントローラで算出。しきい値を超えると電圧を流して振動させる仕組みとなっている。このしきい値はコントローラの性能次第では複数段階設定が可能であり、軽く押した場合と強く押した場合の機能を別に用意すると言ったことも可能だという。
HAPTIVITY iは、このIMSEにHAPTIVITYを組み込んだもの。同社では、2つの技術の特徴を組み合わせることで、薄さと触覚再現性の両立を実現させることに成功したとする。また、IMSEとしては圧電アクチュエータのみならず、LEDライトやタッチスイッチ、圧力センサーなどをモジュール化することができるため、用途に応じていろいろな仕組みを盛り込むことができる。ただし、現状、大きなロジックチップを搭載することは難しく(樹脂を流し込んだときに、位置ずれが生じる可能性がある)、そうしたニーズについては、今後の課題としている。
なお、同社ではすでに野洲工場にHAPTIVITYの量産ラインを構築済みとしており、2022年春までに構築されるIMSE試作ラインと組み合わせることで、2022年夏ころにはHAPTIVITY iの技術サンプルを披露したいとしているほか、2023年に量産を開始することを目標とするとしている。また、IMSE、HAPTIVITYを単なる個別の技術とするのではなく、IMSEを技術プラットフォームとして、京セラの持つほかの技術などと組み合わせた新たな製品展開なども図っていきたいとしている。