TSMCが米商務省が半導体不足に対して、半導体サプライチェーン上の企業に要請した製品ごとの在庫や受注残、納期、調達慣行、増産に向けた企業対応、主要顧客リストなどの提供に対し、顧客情報を伏せた形で回答したと米Bloombergが報じている。同じ台湾ファウンドリのUMCも同様の回答を行った見込みだという。

米商務省は2021年9月、半導体サプライチェーン企業に対し、半導体不足の関連情報を尋ねる質問状に11月8日までに回答するよう求めていた。回答は任意のパブリックコメントの形をとってはいるものの、ジーナ・レモンド商務長官は回答がない場合には強制力を伴う「国防生産法(Defense Production Act of 1950)」や他の手段を発動して行動を強いる可能性があると業界代表らに警告していた。

質問状では、各半導体製品の上位顧客に関する情報に関しても提出を要請していたが、台湾に先立ち韓国の企画財政部は11月7日、韓国内の半導体企業が一部の社内データを任意で米国に提供すると明らかにしたものの、TSMC同様に、顧客情報などを伏せた形での、部分的な対応に留まったものとみられる。

TSMCは、これまで一度も顧客に関する情報は開示したことがない。例えば、同社がAppleのiPhone向けアプリケーションプロセッサを製造受託しているという話は多くの人が知っているが、TSMCが正式に発表したことはない。同社は、通常通り顧客機密の保護に引き続きコミットしていると広報担当者は述べているとBloombergでは伝えている。

中国では、米国が中国企業への制裁目的でTSMCなどが提供した資料を使う可能性があるとの懸念も出ているが、中国企業が米商務省の質問状にどのように対処したのかについては現時点では不明である。

レモンド商務長官が訪日を計画

米商務省は11月7日(米国時間)、11月15日から18日にかけてレモンド商務長官がアジアを公式訪問し、日本、シンガポール、マレーシアの政府関係者やビジネスリーダーと会談する予定であることを明らかにした。

商務省のコミットメントを再確認し、同盟国および主要パートナーとの経済関係を強化するために、インド-太平洋地域を訪問することを目的としており、これらの会談を通じ、半導体サプライチェーンの回復力はじめさまざまな経済問題について話し合う予定だという。レモンド商務長官は、アジア訪問にあたり「同じ志を持つパートナーとの提携関係を再構築することは、アメリカのグローバル競争力を強化するための我々の取り組みの不可欠な部分である」とコメントしている。

訪問日程は15日に日本、16日~17日にシンガポール、18日にマレーシアとしている。マレーシアやシンガポールには半導体の後工程工場があり、新型コロナの感染拡大に伴い、エッセンシャルワークと認められていながらも従業員の多くが感染したことから操業停止状態となったこともある。半導体不足に拍車をかけるこうした事態の実態をレモンド商務長官は把握することを目的に現地に赴くと見られているが、日本については不透明で、半導体に関する話題や、対中制裁についての協議が行われるのではないかとの見方も一部からは上がっているにとどまっている。