日本オラクルは11月4日、コロナ禍でのキャリアに対する意識の変化やAIの活用に関する調査「AI@Work」について、日本の結果を公表した。同調査はオラクルとWorkplace IntelligenceのもとでSavantaが実施したもので、日本を含む13カ国から1万4600人以上が回答した。なお、日本での調査実施は今回が3年目であり、国内からは約1000人が回答している。

日本でのAI活用は13カ国中最下位、3年連続

慶應義塾大学大学院経営管理研究科で特任教授を務める岩本隆氏は同調査について、国内に着目した結果とその特徴を、4点に大別して紹介した。1点目の特徴は、コロナ禍を経て、従業員が孤独感と疎外感を感じており、自分の手に負えない状況だと感じている点である。これを裏付ける結果として、67%の人が昨年の1年間でマイナスな影響を受けたと回答しているほか、50%の人が、2021年は職業人生で最もストレスの多い年であると回答している。さらに、67%の人が私生活にも行き詰まりを感じていると回答したとのことだ。

  • 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 特任教授 岩本隆氏

同氏は2点目の特徴として、キャリアチェンジへの意欲があるものの、同時に大きな課題にも直面している点を挙げた。調査の結果から、86%の人がこの1年で自分の人生について振り返ることがあったと回答したことが明らかになった。また、64%の人が変化を起こす準備ができていると回答した一方で、71%の人が変化を起こすうえで障害に直面していると回答したとのことだ。自身の変化を阻む要因としては、経済的な困窮や、自分のスキルを説明できないといった回答が多かったようだ。

  • コロナ禍での変化を阻む要因 資料:慶應義塾大学

また、職場でAIを活用している国内企業は31%にとどまっており、調査を開始してから3年連続で最下位だったという。さらに、47%の企業は職場でのAI活用の議論すらできていないと回答している。

  • AIを職場で活用している割合は13カ国中最下位だ 資料:慶應義塾大学

4点目の特徴として同氏は、「従業員が新しいスキルを渇望しており、テクノロジーによる支援を活用したいと考えている」と述べた。75%の人が自身の将来設計をするためにテクノロジーを活用したいと考えていると回答したほか、68%の人がAIのレコメンドに基づいて仕事に変化を起こしたいと回答した。さらに、72%がAIは人間の担当者よりもキャリアアップを効率的に支援できると回答したとのことだ。

  • AIには先入観のないレコメンドを求める声が多いという 資料:慶應義塾大学

「パンデミックによるワークスタイルの変化で、自身の人生やキャリアを考え直す従業員が増えているようだ。企業が優秀な人材を確保するには、これまで以上に従業員エンゲージメントを高めることに加えて、個人個人のキャリアに対するサポートも求められている」(岩本氏)

オラクルが提供するHCM領域の取り組み

同調査の結果を受けて日本オラクルの茂原善博氏は、同社が提供するHCM(Human Capital Management)領域における取り組みを紹介した。ポストコロナにおける従業員エンゲージメントの変化として、企業活動の根幹を支える人事領域も大きな変革期を迎えているという

  • 日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 HCMクラウド営業部部長 茂原善博氏

同社は、環境変化に応じた新たなキャリアゴールの再設定をサポートする「Align」、再設定された新たなゴール実現のために社内でキャリア機会の発見をサポートする「Explore」、キャリアゴールの変化に応じて新たなスキル開発を支援する「Grow」の3つの領域で従業員をサポートする。

「これまでは人材の採用や中途退職の抑制によって、次世代のリーダーを育成する点が優先課題とされていた。しかし、コロナ禍によって従業員エンゲージメントのあり方が、企業価値視点から社員の価値視点にシフトしている。社員の既存スキルを可視化して将来のスキル要件を予測するとともに、個人の成長意欲と企業の求めるスキルをマッチングする必要が出てきている」(茂原氏)

続けて、同社の矢部正光氏がより具体的なHCMソリューションとして、「Oracle Journeys」「Oracle Opportunity Marketplace」「Oracle Connections」「Oracle Dynamic Skills」の4つのソリューションを紹介した。

  • 日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/HCMソリューション・エンジニアリング本部 HCMソリューション部 部長 矢部正光氏

「Oracle Journeys」は、オンボーディングやキャリア開発といったイベントに対して、人事チームが従業員を効果的にサポートできるソリューションだ。「メンターになる」「キャリアを育てる」といったさまざまなメニューを選択することで、必要な業務手順や作業リストが提示される。

  • 「Oracle Journeys」の画面イメージ

「Oracle Opportunity Marketplace」は、一時的に人手の必要な仕事や、応援の必要な業務を社内で共有するソリューションである。これにより、従業員は社内でのキャリアアップや、スキル習得の機会を発見できるとのことだ。また、「Oracle Connections」は、従業員が自身の経験やスキル、キャリアを登録可能であり、コロナ禍で見えてきた社員の孤独感を打破し得るソリューションであるという。

  • 「Oracle Connections」の画面イメージ

「Oracle Dynamic Skills」は、従業員の現在のスキルや社内での経験に応じて、将来的なスキル開発の方向性を自動で推奨するものだ。推奨されたスキルの中から、自分が開発したいスキルを選択することで、必要な社内研修やトレーニングが例示されるという。

  • 「Oracle Dynamic Skills」の画面イメージ