優れた研究に取り組む若手女性研究者を表彰する第3回「輝く女性研究者賞(ジュン アシダ賞)」を、東京大学大学院数理科学研究科の佐々田槙子准教授に授与する、と科学技術振興機構(JST)が3日発表した。女性研究者を積極支援する組織をたたえる「輝く女性研究者活躍推進賞(ジュン アシダ賞)」は名古屋大学に、「輝く女性研究者賞(JST理事長賞)」は京都大学医学部付属病院の飯間麻美助教と、東京大学大学院医学系研究科の神谷真子准教授に決まった。授賞式は同日、JSTのイベント「サイエンスアゴラ2021」の一企画として行われた。
佐々田准教授は確率論に代数学や幾何学の理論を活用し、原子や分子などで構成される「小さな世界」の情報から、温度や密度などの「大きな世界」の情報を取り出して説明する新しい理論の構築を進めている。
名古屋大学は女性限定の教員公募、学内保育所や全国初の大学内常設型学童保育所の設置、女性研究者トップリーダー顕彰、学内の最高意思決定機関での女性評議員2割以上などの取り組みで成果を挙げてきた。
飯間助教は造影剤を使わない非侵襲的な「拡散強調MRI」を用い、さまざまな画像の情報を新たに抽出して活用し、体に負担のない安全な乳がんの画像診断法を開発。臨床と基礎をつなぐ研究者として活躍している。
神谷准教授は、細胞に悪影響を与えずに目的の物質と反応して明滅する物質や、細胞内の多数の分子を同時に観察するための物質を開発した。がんなどの的確な発見や摘出、細胞内の詳しい理解などに役立つ。
表彰式は日本科学未来館(東京都江東区)を会場とし、オンラインで公開された。続いて行われたトークセッションは「科学とファッションデザイン こんなに似ている? こんなに違う?」と題し、受賞者やファッションデザイナーの芦田多恵さんらが参加。全く異分野と思われる2つの世界の意外な類似点が浮かび上がったほか、女性研究者を取り巻く状況も議論に上がった。
コロナ禍で研究活動のオンライン化が進んだことに関連し、佐々田准教授は「対面で黒板の前で話すのとは全然違い、やりづらさがある一方、小さい子供がいても出張せず海外の研究会に出られるようになった。また来年くらいから『来てください』となるのか、気になっている」と課題を指摘した。
輝く女性研究者賞は2019年、世界的デザイナーだった故芦田淳氏の基金をもとに創設された。今回は4~6月、原則40歳未満を研究者の対象として公募。選考委員会(委員長=鳥居啓子米テキサス大学教授)が審査した。受賞者にはJSTから賞状と賞牌が、佐々田准教授には副賞として同基金から100万円が贈られた。表彰式とトークセッションの動画は後日、サイエンスアゴラ2021の特設サイト内で再生可能となる。
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