ソフトバンク、ALES、u-bloxは11月1日、高精度測位サービスのグローバル展開に向けた協業に合意したことを発表した。ソフトバンクが日本国内向けに提供する高精度測位サービス「ichimill(イチミル)」について、3社の協業により、グローバルに事業を展開する自動車メーカーや建機メーカー、農機メーカーなどが、日本や欧米などで共通して高精度測位サービスを利用できる環境の構築を目指す。
「ichimill」は、準天頂衛星「みちびき」などのGNSS(Global Navigation Satellite System)から受信した信号を利用してRTK(Real Time Kinematic)測位を行うことで、誤差数センチメートルの範囲で測位を行うシステムである。
同システムは、ソフトバンクの独自基準点が受信した信号を基に「測位コアシステム」で補正情報を生成し、同社のモバイルネットワークを通してGNSS受信機に補正情報を配信する。なお、同社は2018年7月に、測位コアシステムの研究開発と運用を実施する子会社としてALESを設立している。
記者説明会では「補正情報を生成する測位コアシステムを開発し、補正信号を生成するための独自基準点を全国で配備した点が今回の大きなポイントである」と、ソフトバンクのテクノロジーユニットサービス企画技術本部 測位ソリューション部測位ソリューション1課の課長である長谷川誠氏が話した。全国に3300カ所に同社独自の基準点を設置したことで、同社が提供するLTEエリアで同サービスを利用できるようになったという。
近年は、グローバルで展開する建機メーカーや農機メーカーから、グローバルで使用可能な高精度測位サービスに対する需要が高まっている。「測位事業市場の予測を見ると、2025年までに日本と比較して世界では15倍ものポテンシャルがあると推定されており、われわれとしてもグローバルへの提供の検討を進めてきた」(長谷川氏)
こうした背景を受けて3社は、高精度測位サービスのグローバル展開に関するMOU(Memorandum of Understanding:了解覚書)を締結したとのことだ。3社は今後、高精度測位サービスのグローバル展開に向けて、「グローバルな補正情報配信基盤の開発」「グローバル対応デバイスの共同開発」「測位制度の向上とサービス対象エリアの拡大」に取り組む予定だ。
u-bloxは2021年7月から、PPP-RTK方式による高精度測位サービス「PointPerfect」を欧米で提供している。同方式は、「ichimill」が採用しているRTK方式と比較して若干制度は劣るものの、少ない基準点でサービスの提供が可能な特徴を持つ。
「グローバルな補正情報配信基盤の開発」では、補正信号のフォーマットを配信システム上で統一し、国や地域にかかわらず利用可能な共同配信基板を2022年内をめどに開発する。「ichimill」または「PointPerfect」を利用する企業は、国や地域ごとにサービスを契約しなくても、両サービスの対象エリア内であれば高精度測位が実施できるようになるという。
また、「グローバル対応デバイスの共同開発」では導入しやすい価格帯のGNSS受信機を開発し、日本国内向けに提供する予定だ。さらに、3社はグローバルで利用可能なGNSS受信機やモジュールの開発にも取り組むとしている。加えて、「測位制度の向上とサービス対象エリアの拡大」として欧米での測位制度の向上を検討するとともに、アジア圏でのサービス対象エリアを検討するとのことだ。