大阪大学(阪大)は10月28日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が高齢者や糖尿病患者、肥満状態などに危険な理由として、脂肪組織とシャペロンタンパク質「GRP78」の関与を新たに提唱したことを発表した。
同成果は、阪大大学院 医学系研究科 糖尿病病態医療学寄附講座/内分泌・代謝内科学のシン・ジフン助教、阪大大学院 医学系研究科 内分泌代謝内科学 下村伊一郎教授らの研究チームによるもの。詳細は、糖尿病とその合併症、その関連する分野などを扱う学術誌「Diabetes」に掲載された。
GRP78はタンパク質が正常な高次構造を維持するように助けるシャペロンタンパク質であり、ストレス環境においては細胞表面や血中に分泌され、内因性・外因性のタンパク質と結合し、さまざまな病態に関係すること、ならびにさまざまなウイルスと結合し、ウイルスの複製や細胞への侵入など、ウイルスのライフサイクルに関与していることなどが知られているが、GPR78と新型コロナとの関連については、よくわかっていなかったという。
そこで研究チームは今回、その関係性についての調査を実施。その結果、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の表面にあるスパイク(S)タンパク質と細胞表面型・分泌型GRP78が結合し、新型コロナがヒト細胞に侵入する際に利用する「アンジオテンシン変換酵素2」(ACE2)発現細胞への集積を増強させることが見出されたという。
また、高齢者や糖尿病患者、肥満状態の脂肪組織ではGRP78が高発現していることが明らかにされた。そうした人では、高インスリン環境であることが多いためだと研究チームでは説明するが、このようなGRP78の発現は、既存の抗糖尿病薬や生活習慣の改善(食事や運動など)により抑制することが可能であることから、今回の知見を活用することで、今後の新型コロナ感染予防や治療への応用が期待されるともしている。