私たちの住む銀河系の中心に、正体不明の電波源を発見した、とオーストラリア・シドニー大学などの国際研究グループが発表した。これまでに知られている天体とは特徴が異なり、未知の天体の可能性があるとみて注目している。

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    観測された謎の電波源(左上)の想像図(セバスチャン・ゼンティロモ氏、シドニー大学提供)

同大の発表によると、電波は同国西部のアスカップ電波望遠鏡を使い、宇宙で起こる短時間の激しい変動現象を捉える活動の一環で、昨年から今年にかけての観測で捉えた。研究グループのシドニー大学のタラ・マーフィー教授は「最初は見えないが明るくなり、消えて再び現れるという独特の振る舞いをした」と説明する。天体の位置を示す座標を基に「ASKAP J173608.2-321635」と名付けられた。

 この電波は1方向にのみ振動し、その方向が時間とともに回転するという奇妙な特徴を示した。強度は100倍まで劇的に変化し、オンとオフを繰り返すという不規則な振る舞いをみせた。

 研究グループは当初、この電波源の正体を(1)恒星の終末の姿である、回転する超高密度の天体「パルサー」か、(2)表面で巨大なフレアと呼ばれる爆発を起こす恒星--の可能性があるとも考えた。しかし、これらの既知のタイプの天体から届くものとは電波の特徴が一致しなかった。

 昨年の9カ月間に電波を6回検出した後、可視光や、同国東部のパークス電波望遠鏡での観測を試みたが、捉えられなかった。その後、より高感度の南アフリカ・ミーアキャット電波望遠鏡を使ったところ、観測に成功。ただしアスカップの観測では電波が数週間続いたのに対し、1日で消えてしまい、謎は深まるばかりとなった。電波源の正体を突き止めるべく、今後も研究を続けるという。

 マーフィー教授は、南アフリカとオーストラリアに建設を計画中の、世界最大級の「SKA電波望遠鏡」に期待を寄せる。「10年以内にこの望遠鏡が稼働し、空の精緻な地図を日々作り、今回の発見を含む謎を解くのに役立つだろう」としている。

 研究グループはシドニー大学のほかオーストラリア、ドイツ、米国、カナダ、南アフリカ、スペイン、フランスなどの研究者で構成。成果は米国の天体物理学誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に10月12日に掲載された。

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