2022年4月、令和2年改正個人情報保護法の施行が予定されている。同法では、氏名等を削除した「仮名加工情報」が創設される。匿名化データとしては、2017年5月の個人情報保護法改正で導入された「匿名加工情報」がある。
今回、NTTテクノクロスが開催した匿名加工情報に関するプレスセミナーで得た情報を基に、「仮名加工情報」と「匿名加工情報」の違い、利用のメリットなどをまとめてみたい。
「匿名加工情報」とは?
まずは、先に導入された「匿名加工情報」から紹介しよう。「匿名加工情報」とは、2017年5月の改正個人情報保護法の全面施行において、「個人情報の有用性を確保(利活用)するための整備」を目的として新設された「個人情報を特定の個人を識別することができないように加工して得られる個人に関する情報である。
これにより、個人情報も匿名加工情報にすれば、本人から同意を得ていなくても、目的外利用や第三者提供が可能になった。
セキュアシステム事業部第三ビジネスユニットアシスタントマネージャーの小林千夏氏は、「匿名加工情報は個人情報と統計データの中間に位置づけられ、統計データよりも幅広い分析が期待されている」と説明した。
匿名加工情報の作成においては基準が定められており、施行規則第19条に示される規則1号から5号(特定の個人を識別することができる記述の削除、個人識別符号の削除、連結符号の削除、特異な記述の削除、差異のある記述や性質を勘案し適切な措置)のすべてに対応する必要がある。
小林氏は、医療情報の利用に関しては、「医療機関側で匿名加工の検討が必要となること」「匿名加工を外部に依頼する場合、適切な匿名加工能力を有する事業者の判断が難しいこと」「医療機関ごとに匿名加工が必要となること」など、個人情報保護法に課題があったため、2018年5月に次世代医療基盤法が施行されたことを紹介した。
同法では、医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関し、匿名加工医療情報作成事業を行う者の認定、医療情報及び匿名加工医療情報等の取扱いに関する規制を定めている。
次世代医療基盤法のポイントは、医療機関から集めた医療情報を、認定事業者が「匿名加工医療情報」に加工することで、医療分野の研究開発に使用することが可能になったことだ。
「仮名加工情報」とは?
一方、「仮名加工情報」とは、「他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように加工して得られる個人に関する情報」のことをいう。匿名加工情報よりも詳細な分析を比較的簡便な加工方法で実施し得るものとして、改正法で創設される。
仮名加工情報を作成にあたっては、施行規則第18条の7に示される規則1号から3号まで(特定の個人を識別することができる記述の削除、個人識別符号の削除、不正に利用されることにより財産的被害が生じるおそれがある記述の削除)に対応する必要がある。
では、仮名加工情報と匿名加工情報は何が違うのだろうか。まず、匿名加工情報は特定の個人を識別できないように加工する必要があるが、仮名加工情報は他の情報を照合しない限り、特定の個人を識別することができなければよしとされている。また、提供先に当該情報が匿名加工情報である旨を明示することで、第三者提供が可能だが、仮名加工情報は本人の同意を得ていない第三者提供 は不可となっている。
なお、野村総合研究所の調査によると、匿名加工情報作成・提供に係る公表をしている事業者は、2019年2月の時点で366社、2020年3月の時点で501社と、約1年間で135社増加しているという。公表事業者501社のうち、最も多かった業種は小売業の23.6%で、これに保健・福祉業17.2%、その他サービス業12.4%と続いている。
匿名加工情報に関するNTTテクノクロスの主要な顧客の業種は医療・金融・自治体であり、今後は教育と製造の成長が期待できると考えているという。
小林氏は、仮名加工情報の展望について、「第三者提供はできないが、同一事業者内部での利用が可能となる点は価値がある。これまでは、サービスを提供するにあたって、目的外利用をする際は、新たに個人情報をとりなおなさなければならなかったが、仮名加工情報が使えるようになれば、1号から3号に対応すればいいので、企業内で利用する際の不安がなくなり、追加のコストが必要なくなる」と語っていた。