アストロバイオロジーセンター(ABC)と国立天文台すばる望遠鏡は10月23日、直接撮像観測により、若いM型矮星(赤色矮星)に付随する、これまで見つかった系外惑星の中で最も若い年齢となる200~500万年ほどの惑星「2M0437b」を発見したと発表した。

同成果は、ABC/国立天文台ハワイ観測所の平野照幸助教や、米・ハワイ大学の研究者らが参加する国際共同研究チームによるもの。詳細は、英国天文学専門誌「王立天文学会月報」に掲載される予定だ。

系外惑星の大半は、地球と主星の間を系外惑星が横切ることで起きる主星の明るさの減光により検出するトランジット法や、惑星の重力によって主星がほんのかすかながらふらつくことを利用するドップラー分光法など、主星の観測を行うことで惑星の存在を引き算的に検出する「間接法」によって発見されてきた。これは、惑星が主星に比べて小さい上に暗いためで、近くにある明るい主星の光と分離して直接観測することが難しいためである。

地球から約420光年離れたおうし座星形成領域にある恒星「2M0437」は生まれたばかりのM型の赤色矮星で、付随する惑星もほぼ同年齢と見なされている。一般に、若い惑星は微惑星や原始惑星などの衝突合体などによる高温状態が冷め切っていないため、近赤外線で明るく輝くのが特徴であることから、研究チームは2018年に、すばる望遠鏡の近赤外線分光撮像装置「IRCS」と補償光学装置「AO188」を用いた観測を実施、2M0437から0.9秒角離れた位置にある惑星2M0437bを直接撮像で発見することに成功したという。

  • 2M0437b

    すばる望遠鏡によって撮影された2M0437惑星系。主星の光はデータ解析でほぼ取り除かれており、中心より左下に位置する「b」とある光が、惑星(2M0437b)。十字のパターンは副鏡をささえるスパイダーの影響で見える人工的なもの (C)ハワイ大学 (出所:すばる望遠鏡Webサイト)

また、2M0437bが背景の星ではなく、2M0437を周回する惑星であることを確かめるための精密な追観測が、すばる望遠鏡やケック望遠鏡などを用いて約3年をかけて行われたところ、2つの天体が互いの重力で結ばれた惑星系であることが確認されたという。

主星と惑星の距離は、約100天文単位で、観測された明るさから2M0437bの質量は木星質量の3~5倍程度と見積もられた。これは直接撮像観測で見つかった系外惑星の中でも軽い部類で、すばる望遠鏡と補償光学の高い性能ならではといえると研究チームでは説明する。

また、この惑星系の年齢は200~500万年と推定され、確実に惑星と呼べる、木星質量の10倍以下の天体の中でもかなり若い惑星が発見されたことになるという(木星質量の10倍を上回る天体まで含めると、2M0437bと同程度か、それよりもわずかに年齢の若い天体はこれまでの観測から報告されている)。

研究チームによると、従来の惑星形成理論では、赤色矮星のような小質量恒星の場合、2M0437bのような巨大惑星がわずか数百万年という短期間で、主星からある程度離れた位置に形成されるのは難しいと考えられていることから、2M0437bの存在は、巨大惑星がどこでどのように形成されるのかを解明する上で貴重な観測対象となるという。

なお、平野助教は今回の成果を踏まえ、「惑星からの光を直接捉えることで系外惑星が発見された例はあまり多くなく、年齢が1000万年を下回る惑星に至っては数例しか見つかっていません。今回発見された惑星はその中でも特に若く、非常にユニークな惑星系です。今後、すばる望遠鏡に加えて、ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡などによるさらなる観測で惑星の大気などを調べ、生まれたての惑星がどのような性質を持っているのか明らかにしたいと考えています」と、今後の展望を語っている。