キオクシアホールディングス(元東芝メモリ)のNAND開発・製造パートナーであるWestern Digital(元SanDisk)によるキオクシアの買収交渉が数週間にわたって膠着しているとの情報を関係者からのものとして複数の米国メディアが報じている。
2021年夏にはWestern DigitalとMicron Technologyが別々にキオクシアの買収に向けた協議を進めていると噂されていたが、Micron側との交渉は立ち消えとなったようだ。
この状況を報じた一誌であるウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、Western Digitalとキオクシアの交渉がつまずいている要因の1つはWestern Digitalの株価が下落し続いている点だという。同社は6月前半につけた年初来高値から現在まで25%ほど下落している。また、ロイターによると、キオクシアの事業価値に関する両社の見解の相違や日本政府による両社の合併承認の不明確さ、キオクシア大株主の1社である東芝が進めている経営見直しを巡る懸念がネックになっているという。
ただしWestern Digitalは、キオクシア買収をあきらめてはおらず、条件が整えさえすれば交渉を継続する可能性が高いとしているという。
懸念点となる中国当局の許可
もしもWestern Digitalによるキオクシアの買収が進んだ場合、懸念されるのは許認可を与える各国規制当局、中でも中国当局の許可が得られるか否かについて、不透明なものとなると見られている。識者の間でも、中国政府は、自国のNANDメーカーであるYMTCの成長をサポートし、中国内での自給自足を促進することを目的に、Western Digitalによるキオクシア買収を許可しないという見方がある一方、米国政府の輸出規制の影響で、最終製品の組み立てに支障が生じているHuaweiを助けるために許可を出す、とする見方の双方が入り乱れる事態となっている。
なお、キオクシアそのものは新規株式公開(IPO)を計画しているが、当初は2020年秋としていたものを、米国政府によるHuaweiへの輸出規制の影響を受けたことから2021年9月に延期を決定。その9月のIPO計画も11月に延期とし、さらに2022年へと延期されそうな気配も出てきたという。背景には株主の1社である東芝が自社の経営体制の再構築に手間取り、保有株式の取り扱いを決められないためとみられている。2018年6月にキオクシアの筆頭株主となった米国ファンドのベインキャピタルが中心となって東芝メモリを買収した当時は、3年以内の上場を目指す方針だった。
なお、NANDの需要は2021年第4四半期以降、減退し始めており、価格も下落傾向となっていることから、2022年のIPOについても不透明となってきていると言える。