米国政府がエンティティリストに記載し、事実上の禁輸指定とされている中国の通信機器大手Huaweiならびに半導体メーカーSMICに対し、米国内の半導体デバイスメーカーや製造装置・材料メーカーが総額1000億ドル規模の製品や技術の輸出許可を得ていたことが判明したと、米国の複数のメディアが報じている。

米国下院外交委員会は10月21日、同委員会の共和党トップであるマイケル・マコール議員の要請に応じ、輸出許可データの公表を決定。それによると、2020年年11月9日から2021年4月20日までの間に、Huawei向けに計610億ドルの製品・技術に関する計113件の輸出許可が与えられたほか、SMICにも420億ドル近い製品・技術に関する188件の許可が与えられたという。

これらの許可は一般的に4年間有効であり、SMICのサプライヤによる輸出許可申請の90%強が承認され、Huaweiのサプライヤによる申請も69%に許可が下りていたという。

資料の公表を受けて米国商務省は輸出許可の恣意的に切り取った部分だけを公表するのは許可手続きを政治問題化し、政府による国家安全保障に関する決断を誤って伝える恐れがあるとの見解を示し、承認された額と実際の輸出額は同じではないと強調している。

現在、Huawei、SMICともに中国内に半導体工場を新設もしくは増設中で、そのための米国製半導体製造装置が許可の主な対象になったと思われる。また、Huaweiについては、自社の通信・ネットワーク・コンシューマ製品などに搭載するIntel、Qualcommをはじめとする米国半導体メーカーの半導体チップも許可された模様である。

米国半導体工業会(SIA)やSEMIは、米国政府の半導体デバイスや半導体製造装置、材料の輸出規制措置にこれまで一貫して反対の立場をとり、ワシントンD.C.にてロビー活動を行ってきたが、それが輸出許可に奏功した可能性が高い。米国の半導体デバイスや製造装置メーカーにとって中国は最大市場であり、同市場を失うのは死活問題になってくる。

米国商務省の輸出許可・不許可が恣意的に行われているようで公平感がないという声は、Huaweiへの半導体デバイスの輸出が許可されない日本や韓国の半導体企業からも上がっており、今後の動向が注目される。