ラックと三菱UFJ銀行は10月22日、高齢者などを狙った特殊詐欺によるATM不正利用への対策として、AIを活用した不正取引検知の概念実証実験(PoC)を実施したことを発表した。PoCの結果、不正取引の検知率94%を達成したとのことだ。なお、不正検知率は、不正利用された取引のうちAIが検知した取引件数の割合で算出している。
ラックの不正検知AIは、同社のFC3(Financial Crime Control Center:金融犯罪対策センター)が保有している金融犯罪対策の知見を活用して特長量エンジニアリングに反映しているため、一般的なAIエンジンと比較して特殊詐欺やサイバー犯罪に特化している。また、多数の正規の取引の中に、わずか1回のの不正取引が埋もれている場合のような超不均衡データによる制度の低下も克服しているとのことだ。
年間の特殊詐欺被害額は285.2億円にも上り、高齢者を狙ってお金を犯罪者の口座に振り込ませる手口や、キャッシュカードのだまし取りおよび窃盗によって犯罪者がATMを操作する手口など、ATMから不正に出金する被害が多発しているのだという。
これまでにも、不正出金から生活者を守るソリューションとして、ルールベース方式を採用した不正検知システムは存在していた。しかし、同方式は人の手で詳細な条件設定を行うことで不正判定の精度を高める方式であるため、新しい手口の検知ルールを組み込む際に手間がかかる課題があったという。
こうした背景を受けて、ラックと三菱UFJ銀行は2021年5月から、AI技術を活用したATM不正利用の発見手法に関するPoCを共同で進めている。AIを活用することで、ルールベース方式よりも誤検知や運用コストを少なく抑えるとともに、検知の制度を高められるとのことだ。