シスコは10月21日、「東京2020大会におけるシスコの取り組み」をテーマに記者説明会を開催した。史上初となる1年間の延期や無観客での競技を経験するなど、異例の開催となった今大会で、同社が果たした役割について、シスコシステムズの代表執行役員会長である鈴木和洋氏が語った。

  • シスコシステムズ 代表執行役員会長 鈴木和洋氏

同社がスポンサーを務めるのは、2012年のロンドン大会および2016年のリオ大会に続き3大会目であり、大会会場のネットワークの構築を担当した。同氏は今大会の特徴について、「東京都および近県だけでなく、東北地方も含めて広範囲で開催された大会であった」と述べ、広範囲をカバーしながらも高い信頼性を有するネットワークの構築に同社が寄与した点を強調した。

続けて、同氏は「大会期間中に一度もネットワークがダウンすることなく、100%のアベイラビリティを達成できたことを、強く誇りに思っている」と述べた。今大会では、18万6000を超えるデバイスが大会ネットワークに接続されたという。過去の大会と比較してスタッフ数が減少した一方で、ネットワークに接続可能なデバイスが増加したことによって、これまでの大会と同程度のデバイスが大会期間中に使用されたとのことだ。

  • 大会期間中のセキュリティインシデントは発生していないという

同社が今大会で実施した新たな取り組みは5点ある。1点目は、過去の大会と比較しても最多の拠点をカバーするネットワークの構築と運用の支援である。2点目は、9000台の監視カメラなどを含むIoT機器をつなぐネットワークの構築だ。3点目は大会初のオールIP放送の実現であり、競技場内での撮影から編集、配信までを全てIPネットワーク内で実施したとのことだ。

4点目として紹介されたのが、データを活用したアスリート支援である。卓球の日本代表として出場した石川佳純選手および張本智和選手に対して、対戦相手となる選手の過去の試合をデータ分析するアプリや、Webex BOTを使用した試合映像のクリッピングサービスを提供した。5点目の取り組みは、LGBTQを含むダイバーシティの実現やサイバーセキュリティ人材の育成である。人材育成プログラムでは、6500名がオンラインコースを受講したという。

  • シスコが東京2020大会で実施した新しい5つの取り組み

オンラインでの視聴体験など、スポーツの新しい観戦体験となった今大会を、同氏は「デジタルのテクノロジーを高度に利活用した、新たなモデルを示した大会だった」と振り返った。続けて「パリ大会では東京2020の学びや経験を生かして、ネットワークの構築やセキュリティ対策を通じて過去最高の大会になるよう支援したい」と、2024年への抱負で説明会を結んだ。

  • 次の大会でも引き続きネットワークを支援するという

また、同説明会には石川選手と張本選手も出席した。シスコが提供した対戦相手のデータ分析アプリと動画クリッピングサービスについて、石川選手は「全試合の前に対戦相手の動画を確認した。相手のサーブの軌道や攻撃のパターンを確認する際に非常に役に立ったと感じる。開発段階から、対戦相手の動画を確認する際のポイントや必要な機能をヒアリングしてくれたので、大会本番でも使いやすかった」とコメントした。

  • 卓球 日本代表 石川佳純選手

同様に張本選手は「特に男子団体準決勝が印象深い。対戦前に動画データを確認して、相手の戦術や得点のパターンを研究できていたので、1ゲーム目を取られた後でも2ゲーム目から落ち着いて試合に臨めた」と述べた。

  • 卓球 日本代表 張本智和選手