国立天文台(NAOJ)アルマ望遠鏡プロジェクトは10月20日、「いて座B2」の観測データから、これまでに宇宙から検出されたペプチドに似た分子としては最大のものとなる「プロピオン酸アミド」(C2H5CONH2)が放つ電波を検出したと発表した。
同成果は、上海天文台のジュアン・リー氏、NAOJのシン・ルー特任研究員(現・上海天文台所属)らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。
複数のアミノ酸のアミノ基とカルボキシル基が結合し、「-NH-CO-」の構造を持つものを「ペプチド」と呼び、約50個以上のアミノ酸がペプチド結合した分子化合物が「タンパク質」と呼ばれており、生命活動や生命現象においてなくてはならない生体高分子として知られている。
そのため、これらが宇宙空間において多数発見されれば、生命の誕生に関する考え方に影響を与えるものと考えられているが、これまでの宇宙から検出されたおよそ240種ほどの分子のうち、ペプチドに類似する分子は4種のみであったという。
天の川銀河の中心方向に位置する星形成領域「いて座B2」からは、これまでも多くの生命の材料物質となる有機分子が検出されてきたが、多くの分子が存在しているため、逆に各分子を単離するのが難しいという課題もあったという。理由としては、周波数分解能の低い電波望遠鏡で観測すると、複数の分子からの電波が混信してしまうためで、今回の研究では、アルマ望遠鏡で取得された「いて座B2」の観測データを用いることで、こうした課題の解決を目指したという。
その結果、これまでに宇宙で検出されたペプチドに似た分子としては最大のものとなる、プロピオン酸アミドが放つ電波を検出することに成功したという。研究チームでは、比較的大きなペプチド分子が「いて座B2」に存在すれば、同領域の星間化学が非常に複雑で、かつ大規模な星形成の過程で小さな分子からより大きな分子が成長する可能性を示すものとなるとしている。そのため、今回の観測結果からは、「オリオンKL」などの大規模な星形成領域においてもプロピオン酸アミドが存在する可能性があると予想されるとしており、今後のアルマ望遠鏡による観測が期待されるとしている。