昨年から続くコロナ禍の中で、特に飲食店では人材不足の解消やコストの削減といった課題が深刻化している。そうした中で、緊急事態宣言の解除を皮切りに営業を再開する店舗も増えているが、新型コロナウイルス感染症の第6波や、次の緊急事態宣言などのリスクに備えた業務の変革が求められている。
そうした中でBespoは10月21日、飲食店のオペレーション効率化を支援するサービスとして、「SMART REQUEST(スマートリクエスト)」の提供を11月1日より開始すると発表した。そこで、同社の代表取締役である高岳史典氏に、「脱FAX」をキーワードとする同サービスの特徴について聞いた。
プロフィール
1991年京都大学経済学部卒。
P&G でマーケティングの世界に入り、その後、コンサルティング会社を経てライブドアへ入社。
2013年に飲食業界で起業し、ワインバル「ULTRACHOP」や、餃子バー「Chaozu」など3店舗を展開する。
飲食店を経営する中で気づいた課題を解決するため、2018年株式会社Bespoを創業。
--「SMART REQUEST」とはどのようなサービスでしょうか
高岳氏:スマートフォンやタブレット、PCから、発注や請求業務を一元管理できるサービスです。現在の飲食店では食料や飲料などの発注をFAXで行っていることが多く、従業員が営業時間後に、卸業者ごとにFAXを送信していました。
しかし、FAXを主とした運用では、機材費やFAX代金、発注業務で発生する人件費などの直接コストに加えて、発注ミスによる品切れや在庫過多、請求書の誤払いなどのコストも発生します。FAX業務に伴うこれらの課題を解決するために、「SMART REQUEST」を開発しました。
既にお持ちのスマートフォンやタブレットが使用できるので、どこからでも発注業務ができるようになります。また、導入の際に発生する取引先情報の登録といった初期設定作業は当社が代行します。
--「SMART REQUEST」にはどのような特徴があるのですか
高岳氏:大きく分けて、3つあります。1点目は「UI(ユーザーインタフェース)にこだわった点」です。飲食店の現場で働くスタッフの立場からすると、操作が簡単ではないとFAXをベースとした業務を新しいシステムに切り替えようと思わないからです。使い勝手がよくないと、せっかく新しいシステムを導入しても、FAXでの運用に戻ってしまう懸念があります。
そこで、「SMART REQUEST」では、説明書を読まなくても直感的に操作できるUIにこだわりました。試作段階で約10店舗において利用してもらったのですが、操作マニュアルがなくてもスムーズに利用いただけています。これまでに、使用方法に関する問い合わせを受けたことはありません。サービス開発段階で、使いやすさにこだわった結果が出ているのではないかと思っています。
2点目は「発注履歴をCSVで出力できる点」です。従来はFAXを送受信した際の紙で管理していた過去の発注履歴を、CSV形式の電子データで一覧として管理できるようになります。複数の取引先との履歴を管理できるので、納品管理業務を効率化できます。
3点目は、「2つの発注手法に対応している点」です。「SMART REQUEST」から発注する際に、取引先にメールまたはFAXのどちらで送信するのかを選択できます。そのため、卸業者などの取引先が使用しているシステムを気にすることなく、業務をFAXから置き換えることができるのです。
また、多くの飲食店では、取引先に合わせた発注システムを使用している場合が多いでしょう。取引先に合わせて複数のシステムを並行で管理する際に、それに付随してアカウントやパスワードの管理も煩雑になります。「SMART REQUEST」では一度の発注作業で複数の卸業者へ一括発注ができるので、こうした煩雑さからも解放されると期待しています。
--UIを向上させる際の工夫について教えてください
高岳氏:システムを開発する際に、エンジニアと飲食店のスタッフが一緒のチームとして取り組みました。開発段階で異なる意見が出た際は、一見するとエンジニアの意見が正しいような場合でも、飲食店のスタッフの意見を優先して採用しています。それほど、現場のユーザーが使いやすい操作性にこだわりました。
--それでは、今後の目標を教えてください
高岳氏:まずは、来年の早いうちに1000店舗での導入を目指しています。将来的には、現在FAXが主流となっている飲食店の業務を「SMART REQUEST」と入れ替えることによって、飲食店内で扱う数字を一元管理できるシステムを構築したいですね。在庫の管理や発注業務などを、すべて一元管理した上で自動化できるような世界観を目標としています。