ソフトバンクは10月20日、高校生を対象としたAI(人工知能)活用人材を育成する教育プログラム「AIチャレンジ」の提供を2022年4月より開始すると発表した。専門知識がなくても活用できる3種類の最先端AIツールを活用する。

高等学校でのプログラム教育の必修化に伴い、2022年4月に開始される高等学校情報科「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」に対応する2つのコース「AI活用リテラシーコース」「AI活用実践コース」を用意し、基礎から実践まで理解できるカリキュラムを提供。同社は2021年12月に体験版の提供を開始し、2022年1月より申し込みを受け付ける。

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ソフトバンクおよびソフトバンクグループでは2020年5月に、世界最高レベルのAI研究機関として「Beyond AI 研究推進機構」を東京大学、ヤフーと共同で設立し、既存のAIを超える研究を推進している。またソフトバンクロボティクスは4月1日に、中高生のプログラミング教育を推進するため、人型ロボット「Pepper(ペッパー)」の教育機関向けモデル「Pepper for Education」の提供を開始した。

  • ソフトバンクロボティクスが提供する人型ロボット「Pepper(ペッパー)」の教育機関向けモデル「Pepper for Education」

そして今回ソフトバンクは、高校生向けのAI教育に特化した教育プログラムを開始する。10月20日に開催された記者発表会に登壇したソフトバンクCSR本部本部長の池田昌人氏は、「AIを誰もが当たり前に使える世の中にしていきたい。ExcelやWordのようにさまざまなシーンでAIを活用する人材が今後必要だ」と、目指すビジョンを説明した。

  • ソフトバンクCSR本部本部長 池田昌人氏

AI活用リテラシーコースでは、ソフトバンクのグループ企業における事業の実例を基にAIの基礎知識を学習して理解した後、AIを用いた課題解決の方法を学習者が自ら考えるという内容で、情報Ⅰの科目に対応している。

  • 「AI活用リテラシーコース」で行うこと

具体的には、AIには4つの系統「識別系」(画像認識など)、「予測系」(顧客行動予測など)、「会話系」(チャットや翻訳など)、「実行系」(自動運転など)と、2つの型「人間代行型」「人間拡張型」の組み合わせで8タイプあることを理解し、それぞれがどういった場面で活用できるのかを学ぶ。

そして学習者が考えた課題解決の方法に対して、ソフトバンクのグループ企業の実務者が、実際の事業におけるアプローチ方法などを基にして、実践的なアドバイスと講評を行う。

AI活用実践コースでは、情報Ⅱの科目に対応しており、演習テーマに沿ったAIモデルを作成し、身の回りの課題を解決することを学ぶ。生徒は、学習用のデータを使ってAIモデルを作成し、ウェブサービスやPepperなどに実際にAIを組み込むといった実践的な内容を通じて理解を深める。

  • 「AI活用実践コース」で行うこと

AIチャレンジの教材の内容は、『文系AI人材になる』の著者でありZOZO NEXT取締役CAIO(Chief AI Officer)兼日本ディープラーニング協会人材育成委員の野口竜司氏が監修し独自に開発された。

野口氏は「AIを作る人材ではなく、AIを使いこなす人材を育成したいという気持ちから開発した。小難しい話は盛り込まず、若い頃から知るべき内容のみを厳選した。AIを当たり前に感じる『AIネイティブキッズ』を爆増させたい」と、意気込みをみせた。

  • ZOZO NEXT取締役CAIO(Chief AI Officer)兼日本ディープラーニング協会人材育成委員 野口竜司氏

教材には、ソニーネットワークコミュニケーションズが提供する予測分析ツール「Prediction One」や、Googleが提供する機械学習モデル作成ツール「Teachable Machine」と、自然言語対話プラットフォーム「Dialogflow」を使用する予定。いずれもシンプルなUX(ユーザーエクスペリエンス)・UI(ユーザーインターフェース)でありながら、高度な処理を自動的にできる初心者に扱いやすいツールだという。

またソフトバンクは、2021年4月にAIチャレンジの特別協力校となった全国の7校においてトライアルを実施した。実施校の教員からは「AIの定義や社会での活用事例といったスライドを頂いたので、授業ですぐに活用することができた。簡単なツールで、ボタンクリック一つでいろいろできるので扱いやすかった」と、好評だ。

  • 「AIチャレンジ」の特別協力校によるトライアル授業の風景

そして同社は2023年2月頃に、全国高校生の学習成果の発表の場として「AI企画コンテスト」を開催する予定。優秀校にはソフトバンクAI部門へのインターンシップを特典とし、「Beyond AI」研究者との交流の場を設けて、さらなる関心・興味の向上につなげる。「ソフトバンク流の考え方を直伝する」(池田氏)

  • 2023年2月頃開催予定の「AI企画コンテスト」

なおAIチャレンジの提供価格は、AI活用リテラシーコースが1校当たり年間13万2,000円、AI活用実践コースが1校当たり年間29万7,000円となっている。また、オプションとしてオンラインによる演習サポート(11万円)や、課外講師派遣(16万5,000円)などもある。ソフトバンクは同事業をCSR(企業の社会的責任)と捉え、無利益販売で提供するとのことだ。