半導体市場動向調査会社である台湾TrendForceによると、DRAMの大口契約価格は、3四半期続いた強気の期間が終了し、2021年第4四半期に前四半期比3〜8%下落する可能性があるという。この下落は、今後のDRAM購入者の調達活動の低下だけでなく、契約価格を上回るDRAMスポット価格の下落にも起因している可能性があるという。 2022年の3大DRAMサプライヤ(Samsung Electronics、SK Hynix、Micron Technology)の生産能力(ウェハ投入枚数)拡張計画は保守的だが、DRAMビット供給数量の合計は前年比17.9%増となると予想されている。需要側では、現時点での在庫レベルは比較的高いため、ビット需要は同16.3%増にとどまると予測され、ビット供給数量の増加が需要の増加を上回りそうだとTrendForceは分析している。

  • DRAM市場

    DRAM市場の推移と予測(2019年、2020年は実績、2021年、2022年は予測)と前年増減率 (出所:TrendForce)

強気に供給量を増やすSamsung

Samsungのウェハ投入量の増加のほとんどは、比較的大きな生産能力のある平沢事業所P2Lファブによるもので、同社は今後もDRAMへのウェハ投入量を増やし続ける可能性があるTrendForceではみており、その結果、2022年の同社のDRAMビット供給数量の伸びは同19.6%増としている。

また、最新の平沢P3Lファブは2022年半ばまでに完成する予定で、2022年後半よりDRAM生産に貢献し、2023年以降のDRAM供給の成長のけん引役となることが予想される。

一方のSK Hynixは、DDR3メモリ市場の動きが鈍化していることを考えると、古いプロセスの利川M10ファブについて、DRAMからロジックへの転換を進める可能性がある。同社全体としては、最新の利川M16ファブでDRAM生産を開始した後、2022年もDRAMチップの総生産能力を拡大し続けると見られるが、市場の状況に応じてDRAM出荷量を調整することも考えられるという。同社は現在、1Y-nmおよび1Z-nmプロセス技術の歩留まりを向上させることに注力しており、それにより2022年のDRAMビット供給数量は同17.7%増となると予測している。

残るMicronだが、台湾A3ファブの生産能力拡大は、主に次世代プロセス技術への移行する際に発生する可能性のあるロスに対する保険的なものであるため、同社の総生産能力は2021年から2022年にかけて大きく伸びることはなく、DRAMビット出荷数量の増加は主に1Z-nmと最新の1α-nmプロセス技術の歩留まりの向上にかかっている。

同社の1α-nmプロセスDRAM製品はすでに広く採用されており、3大DRAMサプライヤの中でももっとも早いプロセス技術の移行を遂げていると見られており、プロセスの微細化を中心に同社の2022年のDRAMビット供給数量は同16.3%増となると見込まれるという。

2022年のDRAM市場は前年比並みの可能性

DRAM市場のけん引役はスマートフォン(スマホ)、サーバ、ノートPCの3つのアプリケーションだが、これらは2021年に大きく成長を遂げていることもあることから、2022年にそれらの市場でDRAM消費量が大幅に増える可能性は低いとTrendForceでは指摘している。ただし、サーバDRAMについては、Intelの次世代プラットフォームの登場により、64GBサーバDRAMモジュールの採用が拡大することが予想されるため、2022年のビット需要は同20%増と、すべてのDRAM製品カテゴリ中でもっとも高い伸びを示すことが予想されるという。

DRAM市場全体としては、2021年の売上高は900億ドルを超すことが予想されているが、第4四半期より価格下落が進み、2022年上期にはさらに下がることが見込まれるため、2022年を通してDRAM製品の全体的な平均販売価格は同15~20%ほど低下するものとTrendForceでは予想している。このため、ビット出荷数量の増加を価格の下落が相殺する形となり、2022年の売上高は2021年と同レベルに留まるものとしている。また、2022年下期のDRAM価格の動きについては、依然として不確実性があり予測は困難であるとしている。