世界の海鳥の52%にプラスチック添加剤の汚染が広がっていることが分かった、と東京農工大学を中心とする国際共同研究グループが発表した。両極域、赤道域を含む世界の16地域の海鳥分析の結果、添加剤として加えられる化学物質が検出され、汚染が地球規模である実態が初めて明らかになった。

東京農工大学大学院農学研究院物質循環環境科学部門の高田秀重教授と水川薫子助教らを中心に、国内外合わせて18の大学・研究機関の研究者が参加した研究グループが世界16地域で共同調査を実施。32種の海鳥計145羽について、尾羽の付け根にある器官から分泌される「尾腺ワックス」という脂肪を分析した。海鳥はこの脂肪を羽根に塗布することで羽根に撥水性を持たせている

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    尾腺ワックスとその採取(東京農工大学提供)

分析の結果、145羽中76羽、52%から、プラスチックを燃えにくくしたり、紫外線による劣化を防いだりする添加剤が検出された。特に、ハワイのシロハラミズナギドリと西オーストラリアのアカアシミズナギドリでは、胃の中で検出された添加剤の濃度が高かった。このほか、ハワイのアホウドリや亜南極海のアオミズナギドリなどからも高濃度の添加剤が検出された。

日本の粟島(新潟県)のオオミズナギドリからも添加剤が見つかったほか、北極や南極に近い地域の鳥からも添加剤が検出され、検出地域は地球のほぼ全域にわたっていた。

高田教授らは、今回分析した海鳥の10~30%がプラスチックごみを摂取することによって添加剤の化学物質が体内の脂質に移行、蓄積されていると推定。魚などの餌を介して添加剤を摂取した例も多いとみている。

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    海鳥の胃から見つかったプラスチック片(上の皿の中)。調査研究の結果、世界の海鳥の50%にプラスチック添加物汚染が広がり、推定10~30%で摂食したプラスチックから海鳥の脂質に添加剤が移行・蓄積していることが分かった(東京農工大学提供)

プラスチック添加剤としては、製品を燃えにくくする難燃剤や、加工しやすくする可塑剤、紫外線による劣化を防ぐ紫外線吸収剤などがある。これらの化学物質の中には、内分泌かく乱作用や免疫への影響などが指摘されるものもある。

高田教授らは今回の調査結果について「海洋プラスチック汚染が世界中の海の生物に広がっていることを示す結果で、海へのプラスチックの流入を抑える対策が急務であることを示した。今後添加剤による生物への影響を詳しく調べる必要がある」などとしている。

今回調査した国際共同グループには国内からは東京農工大学、北海道大学、東京大学大気海洋研究所、国立極地研究所、名古屋大学、明治大学、東北大学、総合研究大学院大学の8つ、海外からは米国、オーストラリア、南アフリカ、スペイン、エクアドル、アイルランドなどから10のそれぞれ大学・研究機関が参加した。研究成果は11日付の日本環境化学会の英文誌に掲載された。

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