日立製作所と東北大学電子光理学研究センターおよび京都大学複合原子力科学研究所の3者は10月18日、放射線がん治療法の1つであるアルファ線内用療法に必要な、「アクチニウム 225」を、高効率・高品質に製造可能な技術を確立したことを発表した。
同成果の一部は、10月20日~23日に開催される第34回欧州核医学会において発表する予定だとしている。
アルファ線内用療法は、がん細胞を破壊するアルファ線を放出する物質と、がん細胞に選択的に集積する薬剤を組み合わせた治療薬(アルファ線治療薬)を患者に投与し、体内からがん細胞を攻撃するという治療法で、体内に広く分散したがん細胞など、既存の方法では治療困難ながんにも効果があることが知られ、早期実用化が期待されており、世界各国でその効果や安全性などを確認する臨床試験が進められているという。
しかし、アルファ線内用療法に必要なアクチニウムの製造方法は、取り扱いが難しい核物質である「トリウム 229」を原料とした少量生産しか確立されておらず、同療法の普及に必要な量のアクチニウムを確保できないという課題があった。
そこで3者は、これまで日立が粒子線治療や原子力発電分野で培ってきた技術を応用し、核物質を用いない製造方法として、「ラジウム 226」を原料とし、電子線形加速器を用いてアクチニウムを高効率・高品質に製造する技術を確立。原料のラジウム全体に、透過力が高い制動放射線を照射して、アクチニウムを効率的に製造するもので、分離できない不純物が生成されないため、高品質なアクチニウムを得ることができるとしている。
今後3者は、同製造技術の実用化に向けた研究開発を進め、アルファ線内用療法の早期実用化に貢献していくとしているほか、日立は、国立がん研究センターと共同で、同技術で製造したアクチニウムの薬剤への適用性評価に関する研究を2021年10月から開始する計画だという。