アジレント・テクノロジーは10月14日、メディア向けに「デジタルツールを駆使したラボの将来像」と題した説明会を実施。アジレントが目指す将来のラボの姿を披露した。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大により、多くの企業がリモートワークを余儀なくされており、それは分析業界も同様である。アジレントは新型コロナの感染拡大が発生する前から、分析ラボのデジタル化を推進してきたが、その背景にはデジタルネイティブ世代の労働人口の割合の増加があり、そうした新たな世代によりよい労働環境を提供したいという想いがベースにある。

また、ラボの効率化も大きな課題であり、そのためにはダウンタイムの低減が必要となってくる。同社では、そうした分析機器の故障を未然に防ぎ、もし問題が生じた場合でも、セルフサーブ、いわゆるユーザー自身が解決するためのソリューションなどの提供を進めることで、そうしたユーザーの効率化を可能としてきた。

例えば予防保全という観点から開発されたツール「Smart Alerts」は、さまざまな使用状況に基づいて、特定のメールアドレスに種々のアラートが届くように設定することで、複数の分析装置を一括して管理することを可能にした。(過去5年分、約3万8000台以上の分析機器のサービス履歴をベースとした)同社の調査によれば、アラートに基づく的確なタイミングでメンテナンスを行うことで、適切なメンテナンスを実施している装置は、していない装置に比べて年間3.4日間のダウンタイム短縮を実現しているほか、予防保全として、不足の故障対応にかかる手間の35%削減、修理費用を平均41%削減することを可能としているとする。

また、単にアラートで機器の状況を知らせてくれるだけではなく、メンテナンスやエラーに対するメッセージなどを記入することもできるため、申し送り事項などを記録して、担当者につどヒアリングするといった手間を省くことも可能としている。

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  • 「Smart Alerts」の概要

こうしたデジタルツールの活用推進に加え、同社では日々のちょっとしたトラブルの解決などに向けては、コミュニティ活動「Agilent Community」を展開し、「Agilent Community」として、トラブルシュート用ビデオなどを用意しているほか、世界中のコミュニティに参加しているユーザーがトラブルに応えてくれる仕組みづくりを長年にわたって進めてきており、現在ではAI翻訳機能を活用することで、日本語に即座に変換してくれる機能も追加。英語がよくわからない日本のユーザーであっても、言葉の壁がコミュニティ参加への障壁にならないように、といった工夫がなされている。

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  • 「Agilent Community」と「Agilent Community」の概要

さらに、サポートのデジタル化としては、ARを活用して、遠隔地にいるサポートスタッフに機器の様子を見せて、どこに問題があるのかをスマートフォン(スマホ)やタブレット上に表示してもらうことができる「CrossLab VirtualAssist」も提供済み。これは、いわゆるデジタルツインの応用で、PTCのVuforiaをベースにアジレントとして必要と思われる機能を追加する形で開発・提供を行っているというもの。

スマホ/タブレットアプリとして、無料でアプリストアからダウンロードして使用することができるため、ユーザーはコスト負担なしでインストールならびに利用が可能となっており、アジレントのサポートスタッフとライブビューで状況を共有し、リアルタイムでのサポートを受けることができるようになる。

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  • 「CrossLab VirtualAssist」の概要

なお、こうしたデジタルツールを活用した新たなラボの姿について同社では2021年11月8日~10日にかけて幕張メッセにて開催される「JASIS 2021」に出展するブースにて、同社の八王子のラボとつなげて、実際にリモートでつながるデモを体験できるコーナーやラボインフォマティクスコーナーを用意して、来場者にアピールを行っていくとしている。また、同展示会はバーチャルとリアルのハイブリッド開催であるため、バーチャル側にも出展しているほか、5つの新技術に関する説明会も行っていく予定としている。