パナソニックとトヨタ自動車(トヨタ)は10月15日、機械による指部への比較的軽度な傷害の未然防止に向けた評価用ツールとして「裂傷評価指ダミー(指ダミー)」を共同で開発し、即日販売を開始したことを発表した。

  • 指ダミー

    10月15日より発売開始を発表した「指ダミー」(提供:パナソニック)

製造現場では、ロボットの活用が広がっており、中でもヒトと同じ空間で作業を行う「協働ロボット」の導入に注目が集まっている。そうした人と協働ロボットが同じ場所で作業する際には、指の裂傷傷害などが生じることが予測されており、指ダミーは、そうした現場で簡便に安全性に関する検証や改善、妥当性評価ができるツールとして開発に至ったという。

パナソニックは、人に近いと言われる豚の皮膚での検証実験などに基づいて開発している生体安全評価技術を有しており、2005年より指はさみを防止する設計技術「ハサマナイズ機構」や自律搬送ロボットなどの自社製品の安全性評価に独自の評価用ツールを活用してきた経緯がある。この技術をベースに、両社は2018年より指部の安全性評価技術に関する共同開発を開始。トヨタのモノづくり現場での知見・経験を活かす形で開発が進められてきたという。

指ダミーは、人体の骨にあたる芯棒部に、皮膚にあたる軟材料(指ダミー部)を被せた構成で、皮膚に見立てた軟材料は、実際の人体と同程度と推定される裂傷強度(裂傷を発生させる荷重)を有した独自開発のもの。軟材料を被せた部分を機械などに挟み込ませ、その際に軟材料が受けるダメージの程度から傷害を可視化し、指部の軽度な傷害の予測とその評価が可能だとしており、軟材料を交換することで、繰り返し利用することができるという。

裂傷評価指ダミー 社内評価(出典:タナック)

トヨタでは、「協働ロボット導入の際のリスクアセスメントを進める際の、国際規格として『ISO TS 15066』といった機械と接触した際の痛みなどを示した指標が存在するが、指ダミーは裂傷を評価できるものであり、産業現場でケガを防ぐには“痛み”と“裂傷”の両方の評価が必要だと考えている」としている。

  • 指ダミー活用例

    指ダミーの活用例(提供:トヨタ)

なお、指ダミーの販売はタナックが行い、価格は裂傷評価指ダミーセット(指ダミー部品、芯棒、取手 各1個)が6万6,000円、指ダミーの交換部品が4万9,500円となっている。