熊本大学は10月12日、健常者100人を対象としてローヤルゼリー摂取群とプラセボ(偽薬)群に無作為割り付けした二重盲検ランダム化比較試験を実施し、4週間の観察の結果、ローヤルゼリーが血管内皮機能を改善することを確認したと発表した。

同成果は、熊本大大学院 生命科学研究部 循環器内科学の藤末昂一郎助教、同・辻田賢一教授、杉養蜂園の共同研究チームによるもの。詳細は、日本動脈硬化学会が刊行する生物学、生命科学、医学、製薬科学などを扱う英文学術誌「Journal of Atherosclerosis and Thrombosis」に掲載された。

狭心症や心筋梗塞などの虚血性心臓病や脳卒中は日本人の主要な死因であり、要介護となる原因の4分の1を占めてもいる。これらの疾病は、糖尿病、脂質異常症、高血圧、喫煙などの生活習慣が原因で進行する動脈硬化が原因とされているが、疾病を発症した時には、すでに進行していることが多いため、健康時からの予防対策が重要とされている。

血管の内側は、血管の健康を保つ上で重要な働きを担う「血管内皮」という組織で覆われている。この血管内皮が機能障害を起こすことで、動脈硬化の初期変化に至るだけでなく、心臓病、脳卒中などの病因・病態にも深く関連することがわかっていることから、その機能の保持ができれば、将来の心臓病、脳卒中の予防につながることが期待されるものの、血管内皮機能の改善法は今のところ確立されていない状況となっている。

ローヤルゼリーは、ミツバチが体内で生成・分泌する乳白色のクリーム状の物質で、エサとしてローヤルゼリーだけを与え続けられた幼虫のみが女王蜂に分化することもあり、近年その成分が注目され、生活習慣病に対する効果が期待されているが、これまで動脈硬化の早期変化の指標である血管内皮機能への効果を調べた研究はなかったという。

そこで研究チームは今回、健常者100人を対象とした、ローヤルゼリー摂取群とプラセボ群に無作為化割り付けし、ローヤルゼリーまたはプラセボを4週間内服する二重盲検ランダム化比較試験を実施することにしたという。そして、試験前後に末梢血管内皮機能の指標である「RHI」の測定が行われ、血管内皮機能の変化が調べられた。

100例のうち、除外基準該当例を除いたプラセボ群42例とローヤルゼリー摂取群46例において解析を行った結果、試験前後のRHI変化率はローヤルゼリー摂取群で上昇しており、血管内皮機能の改善が見られたとするほか、肝機能の指標であるALTやγ-GTPについてもローヤルゼリー摂取群に改善効果が見られたという。

なお、4週間の観察期間において血糖の上昇や有害事象の発生は見られず、ローヤルゼリーの安全性も確認されたとした。

研究チームでは、今回の研究成果を受けて、血管内皮機能の改善、動脈硬化の予防につながることが期待されるとしているほか、今後の動脈硬化予防の啓発および、さらなる動脈硬化に関する治療方法の開発につなげていきたいとしている。

  • ローヤルゼリー

    プラセボ群とローヤルゼリー摂取群における、RHIの4週間変化率の比較 (出所:熊本大プレスリリースPDF)