宇宙の初期に「ちり」に隠れ、かつ星の形成が穏やかなタイプの銀河を発見した、と国立天文台などの国際研究グループが発表した。南米チリにあるアルマ望遠鏡の電波観測による成果。発見したのは2つで、1つは、ちりに隠れた銀河としては最古の131億年前のものと分かった。このタイプの銀河が多く存在したことがうかがえ、銀河の歴史を理解する上で重要な発見となった。
アルマ望遠鏡は日米欧などが建設した世界最高性能の電波望遠鏡。研究グループは、これを使い130億年以上前の宇宙初期の銀河を詳しく調べる国際計画に参加した。この活動で分析対象のうち2つの銀河それぞれの傍らに、ちりからの放射が強く、炭素イオンの一部の波長が強い光を放つ場所があり、別の銀河があることを偶然に発見した。
従来の観測では見えなかったが、星の光で暖まったちりの遠赤外線放射などを電波で捉え、銀河の存在を突き止めた。一つはくじら座にあり、ちりに隠れた銀河としては観測史上最古の131億年前のものと判明した。 初期の宇宙でちりに隠れた銀河は、激しく星を生み出すタイプだけが見つかってきた。これに対し今回の2つの銀河では、同じ時代の多くの銀河と同程度に星の形成が穏やかだった。
宇宙初期の銀河の光は紫外線として放たれるが、宇宙の膨張の影響で変化し、遠い地球では可視光や近赤外線として観測される。ただ、銀河内にちりが多いと紫外線は吸収や散乱に妨げられ、地球で捉えられなかった。一方、遠赤外線は電波に変化し、アルマ望遠鏡で検出された。
研究者らは、宇宙初期の銀河はちりで隠れておらず、高感度の可視光や近赤外線で十分に観測できると考えてきたという。今回の発見はこうした思い込みを覆し、ちりに隠れ、しかも星の形成が穏やかなタイプの銀河が存在したことを示した。このタイプの銀河が数多くある可能性が浮上してきた。
研究グループの国立天文台アルマプロジェクトの札本佳伸特任研究員(早稲田大学理工学術院総合研究所次席研究員)は「ちりに隠され、全く知らなかった銀河を偶然見つけて驚いている。今回の銀河は非常に狭い領域から見つかっており、氷山の一角だろう。このタイプの銀河がどの程度存在するかが、大きな研究課題となった。われわれは星の形成を一部しか知らなかったのであり、これまでの知識を大きく変えていく必要がある」と述べている。
研究グループは国立天文台、早稲田大学、広島大学、スイス・ジュネーブ大学、合同アルマ観測所などで構成。成果は英科学誌「ネイチャー」に9月23日付で掲載された。
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