Samsung Electronicsは10月7日(米国時間)、同社ファウンドリ事業の年次イベント「Samsung Foundry Forum (SFF) 2021」をバーチャルで開催し、同社のGate-All-Around(GAA)トランジスタ構造に基づく3~2nmへのプロセスロードマップを同社ファウンドリビジネスのプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるSiyoung Choi氏が発表した。今回のテーマは「Adding one more dimension」で、従来の3方向からチャネル電流を制御するFinFET構造から4方向すべてで電流制御するGAA構造への移行を意味するものとなっている。

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  • Samsung Electronicsファウンドリビジネスのプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるSiyoung Choi氏 (出所:Samsung Electronics Newsroom)

Samsungは、従来のFinFET構造を3nmプロセスから独自のGAAテクノロジーである「マルチブリッジチャネルFET(MBCFET)」に移行し、2022年前半に顧客向けに最初の3nmベースのチップ生産を開始する予定だとしている。第2世代の3nmプロセスは2023年に予定されており、2nmプロセスは現在初期段階にあり、2025年の大量生産を目指すとしている。

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    Samsung独自のGAA構造であるMBCFET(マルチブリッジチャンネルFET) (出所:Samsung Foundry Forum 2021におけるChoiプレジデントのプレゼンテーション動画。以下、すべて)

3nm GAAプロセスは、5nm FinFETプロセスと比較して、面積が最大35%減少し、パフォーマンスが30%向上し、消費電力が50%削減されるという。電力・性能・面積(PPA)の改善に加えて、プロセスの成熟度が増すにつれて、3nmの歩留まりはすでに大量生産に展開されている4nmプロセスと同様のレベルに近づく見込みであるとしている。Choi氏は、5/4nmプロセスを今後は先端車載チップにも適用していくと述べた。

競合であるTSMCやIntelは、それぞれN2およびIntel 20A(いずれも2nmを意味する各社の技術ノードの呼び名で、実際の物理長を指していない)からGAAを採用するとしているのに対して、Samsungは競合優位性を確保するため3nmからGAAを採用するという。しかし、GAAは製造工程が複雑で、長期にわたる歩留り低下の危険性があるため、TSMCやIntelは、FinFETで行けるところまで行く方針をとっている。過去、7nmプロセスへのEUV導入の際にも、TSMCは7nmの第1世代製品への適用を見送ったが、Samsungは最初からEUVを適用するとしたため、Samsungの7nm製品の出荷がTSMCよりも遅れたということがあった。今回の3nmでの方針の違いが、どう転がるかが注目される。韓国半導体業界関係者によると、Samsungの2022年のGAA生産は、ごく少数の特定顧客に限ったアリバイ作りであり、実際の導入は2023年以降になりそうだという。

CIS/DDI/MCU向け17nm FinFET特殊プロセスがデビュー

Samsung Foundryは、FinFETプロセス技術についても改良を続けていくことを掲げており、今回、アプリケーション固有の競争力を持つ特殊製品をサポートする目的で、CMOSイメージセンサ、DDI(ディスプレイ・ドライバIC)、およびMCU(マイコン)向け17nm FinFETプロセスを発表した。この17nm FinFET特殊プロセスは、14nm FinFETのFEOLプロセスと28nmプレーナー構造のBEOLプロセスを組み合わせて実現したもので、既存の28nmプロセスと比較して、面積が最大43%減少し、パフォーマンスが39%向上し、電力効率が49%向上するとしている。

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    28nm BEOLと14nm FEOL技術を組み合わせて特殊プロセス向け17nm FinFETを開発

さらに、書込速度と密度の向上を可能にする3.3V高電圧フラッシュタイプの組み込みMRAM(eMRAM)向け14nmプロセスを進めていることも明らかにした。これは、マイコン、IoT、ウェアラブルなどのアプリに最適なオプションであるという。このほか、8nm FinFETプロセスについては、新たに無線周波数(RF)プラットフォームとして整備し、5G向け半導体向け技術ラインナップをサブ6GHzからミリ波アプリケーションへと拡大する計画だとしている。

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    フラッシュタイプの組み込みMRAM(eMRAM)をサポートするために、14nm FinFETプロセスを開発中

まもなく韓国にファブを増築、米国には新拠点を設立

なお、Samsung Foundryは拠点として現在、韓国器興にS1とLine 6、米国テキサス州オースチンにS2、韓国華城にS3とS4、韓国平沢にS5 Phase 1(第1期工事分)を有しており、S5 Phase 2棟の建設を進めている段階である。ちなみにSはシステムLSIの頭字であり、これらの製造施設では、システムLSI事業部門とそこから分離したSamsung Foundryが共同使用している。

これらの既存ファブに加えて、米国内に新たにファブを新設する予定で複数の候補地から絞り込みを進めているというが、SFF2021の時点では建設場所を含め詳細を明らかにすることはできないとしている。ただし、近い将来には発表するとしており、複数の米国メディアが、建設地をテキサス州Taylor市に決めたかのように報道しているが、Samsungとしては「なにも発表していない」と否定している。

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    Samsung Foundryの韓国および米国の製造拠点