横河ソリューションサービスとNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は10月7日、自動制御が困難なため手動オペレーションが不可欠なプラント運転をAIにより支援する「AIプラント運転支援ソリューション」をJNC石油化学 市原製造所に導入し、実証実験に成功したと発表した。
「AIプラント運転支援ソリューション」は、プラントに蓄積されたプロセスデータと現場の運転員の知見をもとに、手動オペレーションを模倣学習でモデル化。稼働中のプロセスデータにそのモデルを適用することで、AIが運転員に手動オペレーションの推奨値をガイダンス表示するとともに、その根拠を提示するものだ。
開発にあたっては、横河ソリューションサービスが提供するプラント制御改善コンサルティングのノウハウ、NTT ComのAI開発ツール「Node-AI」により作成されたAIモデル、「アトリビューションマップ作成技術」による要因可視化を組み合わせて実現したという。
この実証実験は、運転員による手動オペレーションが不可欠なプラント運転において、運転中のプロセスデータからAIが提示した推奨値を運転員にガイダンス表示し、手動オペレーションに反映することで、さまざまな経験年数の運転員への支援に対する同ソリューションの実用性を評価したものだ。
AIモデルの精度を評価するMAE、および運転員による「提示されるAI推奨値の信頼性」、「ユーザーインターフェイスの視認性・判読性」、「同ソリューションの有効性」に関する評価を基準とし、定量・定性的な観点から総合的に同ソリューションの実用性をJNC石化プラント内の対象のプロセスで確認した。その結果、MAEについては実用化に向けてあらかじめ設定した目標を超え、運転員の定性的な評価についても支持を受け、高い実用性が確認されたという。
運転員からは、AIが提示する推奨値が実際の運転員の操作と高い精度で一致したとしてその信頼性が評価された。ユーザーインターフェイスの視認性・判読性については、AIが推奨した要因が示されるため理解がしやすく、実際の要因についても納得できるものであったという。同ソリューションの有効性については、オペレーションの改善活動や技能伝承の効率化にも繋がる可能性があり、将来的には自動化を期待できると感じたということだ。
両社はこの実験の結果をもとに同ソリューションのさらなる改善に取り組み、2021年度中に商用化予定だという。また、化学プラント以外の業界への展開も検討するということだ。今後は同ソリューションを発展させ、プラント運転の技能伝承を支援する機能の拡充および自動化の実現を目指すとしている。