スウェーデン王立科学アカデミーは6日、2021年のノーベル化学賞を、多彩な分子を作り出すための不斉有機触媒を開発した独マックス・プランク石炭研究所のベンジャミン・リスト所長・教授(53)と、米プリンストン大学のデビッド・マクミラン教授(53)の2氏に授与すると発表した。
2019年の吉野彰氏以来となる、日本人の化学賞受賞はならなかった。
触媒は、化学反応を速めるために用いる物質で、それ自体は反応の前後で変化しないもの。化学研究に不可欠で、金属と酵素が用いられてきた。こうした中、両氏は2000年、それぞれ独立に「不斉有機触媒」と呼ばれる第3のタイプの触媒を開発した。酸素や窒素、硫黄、リンなどの一般的な元素でできており、環境に優しく安価に製造できる利点がある。
右手と左手のように、有機化合物を作る原子の数や種類が同じなのに、鏡写しのように向きが反対の物質を「鏡像体」という。両者は性質が異なるため、有用な一方のみを生み出す「不斉合成」が求められる。医薬品製造などで、これらの一方のみを必要とする場合がある。両氏が開発した触媒は不斉合成に有用で、利用が急拡大しているという。
両氏の成果を機に、有機触媒研究は著しく発展。両氏はこの分野を牽引し続け、多彩な反応に役立つことを示した。医薬品や太陽電池に用いる分子など、あらゆるものを効率良く作り出すことに道を開いたという。ノーベル財団は「人類に最大の利益をもたらしている」と評価した。
賞金計1000万スウェーデン・クローナ(約1億2600万円)が両氏に贈られる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け昨年に続き、受賞者は12月10日にスウェーデンで開かれる授賞式に出席せず居住国で表彰を受ける。
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