ピュア・ストレージ・ジャパンは10月5日、新サービスとなるセルフサービス型のストレージ・プラットフォーム「Pure Fusion」とクラウドネイティブなDBaaS「Portworx Data Services」に関するオンライン記者説明会を開催した。

説明会の冒頭では。ピュア・ストレージ・ジャパン 代表取締役社長の田中良幸氏が事業のビジョンや方向性を発表した。

  • ピュア・ストレージ・ジャパン 代表取締役社長 田中良幸氏

2019年に「モダン・データ・エクスペリエンス」構想を導入し、2020年にPortworxを買収したピュア・ストレージは現在、クラウド運用モデルをリードする方向性を打ち出して事業を展開する。田中氏は「今後10年間のデータ活用方法を定義したとき、データストレージをクラウドサービスで管理する世界に向けてユーザーをサポートしていきたい」と意気込む。

今後10年の市場動向のキーポイントとしては、オンプレミス・クラウドを問わない「クラウド運用モデル」の採用、クラウド・ネイティブ・アプリケーションの登場、インフラストラクチャーのオールフラッシュへの移行が挙げられた。

そのうえで田中氏は、「次世代のインフラやアーキテクチャにおいてIaC(Infrastructure as Code)という在り方が浸透し、コンテナ上にさまざまなアプリケーションが構築され、Kubernetesにより管理される世界が間近に来ている。新たなアーキテクチャにいち早く移行することが求められる中で、新たな時代のデータプラットフォームをけん引するだけでなく、下支えとなるテクノロジーにも投資し、常に最新のサービスをビジネスインフラストラクチャーとして提供していきたい」と語った。

「Pure Fusion」については、ピュア・ストレージ・ジャパン プリンシパル・テクニカル・ストラテジストの岩本知博氏が解説した。

  • ピュア・ストレージ・ジャパン プリンシパル・テクニカル・ストラテジスト 岩本知博氏

「Pure Fusion」はストレージの設定を自動化するプラットフォームだ。ユーザーはアプリケーションに対して、ボリュームのプロビジョニングから運用までをセルフサービスで実施できる。一般提供は2022年の見込みで、一部の企業と共同でプレビュー版での検証を2021年中に行う予定だという。一般提供時の価格は未定となる。

岩本氏は「キーワードはセルフサービスだ。ストレージ管理者はサービスプロバイダとしてストレージ・クラスやプロテクション・ポリシーのカタログを用意し、ユーザーはそのカタログから構成要素を選ぶだけでストレージの設定が行える。バックグラウンドでコードとしてストレージを自立化するStorage as-Codeによって自動化を実現しており、オンプレミス、クラウドどちらの環境でも利用できる」と説明した。

多くの企業では、あつかう製品が複雑なことに加えて、ストレージチームと他のチーム間でコミュニケーションが複数回発生することで、ストレージのプロビジョニングに数日から数週間の時間を要する。「Pure Fusion」ではパフォーマンス、容量、保護・バックアップをGUI(Graphical User Interface)上で選択することで、自動的にプロビジョニング。アレイの定義も自動で行え、ストレージ構成を数分で完了できるという。

  • 「Pure Fusion」のアーキテクチャ

Pure Fusionは、同社が提供するクラウドベースの管理ツール「Pure1」とも連携しており、同プラットフォームと接続しているアレイの稼働状況をリアルタイムに把握・管理できる。将来起こりえる障害や容量の変化をPure1のAIが予測し、ベストなボリューム配置なども提案する。また、Pure1と同社のFlashArray//Xシリーズを接続することで、無制限に性能・容量をスケール可能だという。

今後はピュア・ストレージが提供するFlashArray//X、FlashArray//C、Pure Cloud Block Storeなどの製品と統合可能になる予定だ。将来的には同社のFlashBladeやPortworxとの統合とともに、Pure FusionとPure1で統合管理するセルフサービス型のストレージインフラの提供を同社は構想している。

「Portworx Data Services」の紹介は、同社クラウド・アーキテクト(Portworx)の溝口修氏が行った。

  • ピュア・ストレージ・ジャパン クラウド・アーキテクト(Portworx) 溝口 修氏

「Portworx Data Services」は、「Portworx enterprise」上に構築されたクラウドネイティブなDBaaS(Database as-a-Service )で、Kubernetes向けのデータ統合プラットフォームである「Portworx」の拡張版となる。9月28日からアーリーアクセス版を一部ユーザーに提供しており、近日中に一般提供される予定だ。

同サービスは、Portworxの製品群を活用しながら、開発者、インフラストラクチャー管理者の作業を簡素化し、セルフサービスに近い形でデータベース・サービスを提供することをコンセプトとしている。

溝口氏は、「大規模な環境になればなるほど複数のデータベースが乱立するが、設定や保護の仕組みは異なる。しかし、それぞれのスペシャリストを揃えるのは現実的ではない。Portworx Data Servicesは、mongoDBやApache Cassandraなどのモダンデータベースを1クリックで導入できる環境を提供する」と述べた。

  • 「Portworx Data Services」の概要

例えば、開発者がApache Cassandraを利用して新たなデータベースを立ち上げる際には、1クリックで導入し、「Portworx Data Services」のテンプレートやポリシーをもとに、Kubernetesでのクラスタやワーカーへの配置、ボリューム、レプリケーションなどを設定できる。

なお、「Portworx enterprise」をベースにしているため、SDSでのコンテナへのデータ保存、バックアップ、ディザスタ・リカバリ、オンプレミスからクラウドへのマイグレーション、セキュリティ機能を有しており、クラウド・オンプレミス問わず、さまざまなストレージ、サーバーで動作可能だ。

「Portworx enterpriseを利用することで、モニタリング、バックアップ、高可用性、ディザスタ・リカバリ、移行、自動スケーリング、セキュリティなど、運用段階の操作が完全に自動化することが可能だ。多くのDevOpsエンジニアが障害対応やデータ管理、マイグレーションに追われている中、開発者がイノベーションに集中できる環境を提供していきたい」(溝口氏)

説明会の最後には、PortworxとPure1の最新アップデートが発表された。近日中に「Portworx enterprise」上でコンテナの拡張トポロジー機能が利用可能になるという。