半導体市場調査会社であるIC Insightsによると、2021年8月までの半導体企業による半導体企業、ビジネスユニット、製品ライン、および関連資産に関するM&A金額は、第1四半期に2014年の調査開始以降、最高額となる158億ドルとなったが、4月以降は減速し、8月までの累計では2019年の247億ドル、2020年の234億ドルを若干下回る220億ドルとなったという。
具体的には8月までに14件の買収案件の発表があり、その平均額は16億ドルで、2020年の同期間の契約数は同じく14件で平均額が17億ドルであったのに比べると、若干下がっている(同社の統計は、M&A契約時点での集計となっており、後にM&Aが破談になった場合、その額を減じて集計しなおしている)。
今年の買収案件を見てみると、2010年代後半同様、多くの製品および製造セグメントを業界内で統合して事業拡大をもくろむ半導体企業や、最終製品での存在感を高めようとしている企業によって推進されている。最終製品としては、IIoT、ロボット、自動運転車、ADAS、人工知能(AI)/機械学習、画像認識、5Gセルラーネットワーク、組込機器への高速ワイヤレス接続などが目立っているという。
2020年のM&A総額は過去最高となる1179億ドルを記録したが、4件の大型買収案件が下半期に発表されたことが大きい。この4件とは、9月以降に発表されたNVIDIAのArm買収計画(400億ドル)、AMDによるXilinxの買収計画(350億ドル)、Marvell TechnologyによるInphiの買収計画(100億ドル)、SK HynixによるIntelのNAND事業と大連300mmファブの買収(90億ドル)で、このうち3件は、まだ規制当局の認可を待っている状態である。2021年もまだ約3か月残っていることから、今後、急成長市場での地位強化を目指す企業による大型案件が出てきた場合、通年での買収額は大幅に増加する可能性があるという。
一部の米国メディアが伝えているところによると、IntelがGlobalFoundries(GF)を約300億ドルで買収しようとする動きがあるというが、交渉の進捗は不明である。また、NANDフラッシュメモリ分野ではWestern Digital(旧SanDisk)がパートナーのキオクシアを200億ドル超で買収・合併することを模索しているともしている。ただし、GF、キオクシアともに、2021年第4四半期に予定されている新規株式公開(IPO)を進めることを優先しているとも伝えられている。これまでにもMicron Technologyのキオクシア買収、Samsung Electronicsのルネサス エレクトロニクス買収、UMCによるジャパンセミコンダクター買収などの噂が、一部メディアで取り上げられてきたが、現在その噂は沈静化していている。