スマートフォン(スマホ)やノートPCでの急速充電ニーズの拡大に伴い、GaNパワーデバイス市場が急成長しており、2021年の市場規模は前年比73%増の8300万ドルに達するとTrendForceでは予測している。

  • GaNパワーデバイス

    GaNパワーデバイスサプライヤの市場シェアランキング(2020年実績と2021年予測値) (出所:TrendForce, 2021年9月)

GaNパワーデバイスのトップは2014年創業の米国ベンチャー

2021年のGaNパワーデバイスサプライヤシェアトップとなるのは、2014年に創業されたGaNパワーデバイス専業ファブレスの米Navitasで、その割合は29%と見られている。独自のGaNパワーIC設計技術を武器に現在、Dell、Lenovo、LG、Xiaomi、OPPOなどのスマホ/PCメーカーと提携しているという。

2021年の需要の高まりを踏まえると、同社は生産能力の問題を解決するために、2021年下半期には製造委託先のTSMCの6インチウェハファブであるFab 2から、他の8インチファブに製造委託先を変更する予定だという。また、同時に中国の化合物半導体メーカーXiamen Sanan Integrated Circuit(SAIC)をファウンドリとして使うことも検討している模様で、2022年にデータセンター市場向けGaN製品のリリースに向けた準備とも考えられるという。

市場2位は2020年トップであった米Power Integrations(PI)で、2021年に入り、独自技術に基づいたInnoSwitch 4-CZシリーズのGaNデバイスをリリースしており、Ankerの65W急速充電器などに搭載されている。また、統合AC-DCコントローラおよびUSB PDコントローラICも提供を開始しており、同社の成長の一助になるものと見られている。

中国政府の補助金政策で3位に急上昇してきたInnoscience

3位となると見られている中Innoscienceのシェアは2020年の6%(5位)から20%に上昇すると予測されており、高電圧および低電圧GaN製品の出荷が増加したことが背景にあると見られている。蘇州にある同社の8インチウェハファブはすでに大量生産を開始しており、IDMとしての競争上の優位性を徐々に発揮しているという。

ちなみに、中国政府は国内における第3世代半導体産業への資金的支援を強化しており、米中貿易戦争によるサプライチェーンリスクに備えようとしている。国内代替品としての認定/検証および製造の両方に対する機会が生まれ、中国の第3世代半導体産業の成長がさらに促進されつつある。TrendForceの調査によると、中国は2020年に第3世代半導体の国内生産能力を拡大することを目的とした約25のプロジェクト(GaNベースのオプトエレクトロニクス材料およびデバイスを除く)に投資している。

なお、TrendForceによると、2021年上半期の時点で、中国にGaN-on-Siウェハ向け生産ラインが7つほど設置されているほか、少なくともGaNパワーデバイス向け生産ラインが現在も建設中だという。

中国では、第3世代半導体産業のもう一方、SiCについては主に4インチウェハをベースにしているが、6インチウェハへの移行を急いでいる。そのため、世界の競合他社との技術格差は縮小しているが、いまだにSiC単結晶の品質の点で劣っていると見られ、高性能SiC基板の自給率はまだまだ低い状況となっているという。