JAXAは10月1日、水星を目指して惑星間を航行中の探査機「ベピコロンボ」が、日本時間2021年8月10日22時51分53秒に金星に最接近して高度552kmを無事通過し、秒速約5.6kmのスイングバイを行い、予定通りに水星へと向かう軌道に入ったことを発表した。
また、European Space Agency(ESA)は10月2日(現地時間)、「ベピコロンボ」が日本時間2021年10月2日08時34分ころに水星への1回目のスイングバイを実施したことを発表している。
JAXAとESAの国際水星探査計画「ベピコロンボ」は、JAXA担当の水星磁気圏探査機「みお」(MMO:Mercury Magnetospheric Orbiter)と、ESA担当の水星表面探査機(MPO:Mercury Planetary Orbiter)の2つの周回探査機で構成される。2018年10月20日に、フランス領ギアナ宇宙センターからアリアン5型ロケットによって打ち上げられた。
今回の金星スイングバイは2020年11月4日に実施された1回目に続く2回目で、1回目の最接近高度1万722kmと比べると、高度552kmとまさに金星をかすめるようにして予定通りに水星への軌道に入った。水星到着は2025年12月5日の予定で、それまでの総航行距離は(太陽中心座標系で)約88億km(60天文単位弱)にも及ぶ。
今回の金星への最接近で心配されたのが、「みお」が短時間ながら金星大気からの強い太陽反射光に照らされたことだ。惑星間空間を航行中、「みお」は常に太陽光シールドに覆われているため、通常は太陽光が入射することはない。しかし、金星最接近の際は通常とは違う角度からの反射光があるため、側面の太陽電池パネルの温度が15分間で約110℃も上昇したという。ただしこれは想定範囲内の変化であり、十分に断熱された探査機内部における温度上昇は2~3℃程度に収まっていることも確認されている。
また今回の金星スイングバイでは、搭載されている複数の装置による金星の観測・計測も実施されたほか、科学観測装置による、太陽風および金星周辺プラズマ環境の観測も実施された。磁力計では、太陽風と金星の相互作用により、金星への接近に伴って堰き止められた太陽風の磁場が強くなる様子が計測されたとするほか、プラズマ粒子観測装置では、金星電離圏の電子・イオンの分布や衝撃波面通過の様子が観測されたという。
1回目となる水星スイングバイでは、水星の高度約198km付近を通過。最も接近した際の撮影が約1000kmの距離から行われたほか、「みお」に搭載されるほぼすべての観測装置で最接近の前後約24時間にわたり科学観測が実施され、水星磁気圏および周辺環境の観測が試みられたという。