日立製作所と日立Astemoは、インホイールタイプの電気自動車(EV)向けに、ホイール内部にモータとインバータ、ブレーキを一体で搭載可能な小型・軽量のダイレクト駆動システム「Direct Electrified Wheel」を開発したことを9月30日に発表した。
従来のEVでは駆動システムを車体側に設置するため、車内空間やバッテリー設置スペースの確保が課題であった。これを解決する方法として、モータをホイール内部へ搭載するインホイール式が検討されているが、ホイール内の重量が増加してしまうほか、既存のブレーキやサスペンションの大幅な改造が必要といった課題があった。
そこで両社は、これまで日立グループで培った鉄道、エレベータなど広範なモビリティ分野の技術開発や製品化実績に基づき、同システムを開発。
同システム用に開発したモータは、駆動力を向上するために磁石を「ハルバッハ配列」にすることで、磁極ごとの有効磁束を増加させて駆動力を高めるとともに、ビーム溶接などによって扁平なコイルを高密度に配列することでモータ全体を軽量化し、パワー密度として世界トップクラスの2.5kW/kgを実現。従来のインホイール式で課題だったホイール内の重量増加を抑制できたとしている。
また、小型化したモータにインバータとブレーキを一体化し、絶縁性の高い冷却油でパワー半導体を直接冷却したあと、そのままモータに循環してコイルも直接冷却する技術により、冷却配管のスペースを削減することで、サスペンションなどの既存構造を大きく変更せずにホイール内部への搭載を可能としたという。
さらに、開発したインホイール式EVでは、ドライブシャフトなどの間接機構を廃してモーターの力をそのままEVの走行に利用することで、既存のEVに比べてエネルギーロスを30%低減し、一回の充電で走行できる航続距離を増やすことができるとしている。
なお、両社は今後も、同技術の実用化に向けた研究を進め、車内空間やバッテリー設置スペースの拡大が容易なインホイール式のEVの実現に貢献していくとしている。