Samsung Electronicsと米ハーバード大学の研究成果となる、「Neuromorphic electronics based on copying and pasting the brain(脳をコピー&ペーストするニューモロフィック・エレクトロニクス)」と題する論文が学術誌「Nature Electronics」に9月23日付で掲載された。
Samsungは、人間の脳を模した人工知能(AI)チップの実現を目指して2019年からハーバード大と共同研究を進めてきたが、その成果の一部が披露されたこととなる。
論文著者は、Samsung総合技術院(Samsung Advanced Institute of Technology、Samsungグループの中央研究所に相当する組織)フェロー兼ハーバード大学教授であるDonhee Ham氏、ハーバード大のHongkun Park教授、Samsung SDS(SamsungグループのICT事業会社、元Samsung Data System)社長のSungwoo Hwang氏、Samsung Electronics副会長のKinam Kim氏というそうそうたるメンバーとなっている。
ニューモロフィック・エレクトロニクスは人間の脳の神経形態を模倣して、認知・推論など脳の高レベルな機能を半導体チップ上で再現することを目標としている研究分野である。今回の論文は、脳の神経ネットワークから発せられるニューロン(神経細胞)の電気信号をナノ電極により超高感度で測定して神経ネットワークの機能的なシナプス接続マップをコピーし、コピーされたマップを半導体メモリの3次元ネットワークに貼り付ける(Copy-Paste)ことにより、各メモリがニューロン間の接点の役割をして脳固有の機能を再現するニューロモーフィックチップ技術という方式を提案したものとなっている。
人間の脳にある約100兆個のニューロン接点を半導体メモリ網で再現するには、メモリの集積度をさらに増加させる必要があるが。今回の論文は、3次元フラッシュメモリ積層技術や3次元積層の広帯域DRAMに採用されているTSV(Si貫通電極)による3次元パッケージングなどといった最先端の半導体技術をフル活用して実現することを提案している。Samsungは、韓国政府の非メモリ分野強化政策の一環として次世代AI開発に注力しているが、最終的にはSamsungの主力分野である半導体メモリの大量消費にもつながり、Samsungにとっては、魅力的な研究テーマになっているといえる。