TrendForceによると2021年後半のNAND市場は、データセンターとエンタープライズサーバは堅調ながら、スマートフォン(スマホ)、Chromebook、テレビなどの家電製品の出荷が予想を下回っているほか、メモリカードやUSBメモリといった小売用ストレージ製品の需要も低迷していることから、その契約価格は2021年第4四半期には前四半期比で横ばいから5%ほど低下するとの見通しだという。
家電製品の需要が鈍くなっている背景には、欧米で新型コロナワクチンの接種が進み、外出制限が緩和され、学校や企業が再開し始めていることがあるという。また、NANDサプライヤ側も、128層以上の3D NANDの生産能力を高めてきており、結果としてチップ供給量がSSDの需要を上回りつつある中で、こうした市場の鈍化となっているため、サプライヤが価格設定の見直しに積極的になるとTrendForceではみており、結果としてクライアントSSDの契約価格は同第4四半期に同3~8%減となると予測している。
一方のエンタープライズSSDも、データセンターセグメントの顧客が2四半期連続で注文量を増やしており、在庫も着実に増加していることから、第4四半期に需要が弱まり始めると見られるほか、サーバの出荷台数そのものも、半導体不足の影響を受け、同四半期には同9%減と予想されており、エンタープライズSSD向けビット数量需要も同四半期は同7%減となると予測している。しかし、同市場で強みを持つIntelがマレーシアでの新型コロナの感染拡大の影響から、第3四半期以降ビット出荷数量を減らしてきており、改善の兆しが見えないことから、エンタープライズSSDの契約価格自体は、第4四半期に同0~5%ほどの上昇となると予測している。
また、テレビやタブレットなどの消費者向け製品も、従来の在庫のピークシーズンを過ぎたことから需要が弱まっているほか、コントローラICの不足を恐れ、上半期にユーザー企業側が在庫積み増しを図ったことから、eMMCの注文が抑制されることとなっており、同四半期のeMMC価格は同5~10%の下落が予想されるとするほか、UFSについても、東南アジアの新型コロナ感染拡大によるスマホの年間生産量見通しの下方修正をTrendForceでは行っており、iPhone 13や各社のフラッグシップスマホの需要も第4四半期に入ると減速するとの見方から、その価格は同0~5%ほどの減少と予測している。
このほか、NANDウェハの価格も下げる傾向にあるという。Western DigitalやMicron Technology、そして中国のYMTCは、顧客でのテストや組み込みに向け、112/128/176層の製品サンプルをモジュールハウスに積極的に供給し始めており、層数が増えたことによる輸送コストの削減から、サプライヤの値下げ余地が広がると見られ、同四半期に価格が同10~15%と大きく下落するものとTrendForceでは予測している。