カシオ計算機は9月27日、全国のICT化が完了している高校の教師・していない高校の教師各206名ずつを対象にした高校におけるICT教育の実態調査結果を発表した。

同調査によると、1人1台環境が整備されている高校でも、ICTを「積極的に活用している」と回答した教師は37.4%。逆に言えば、62.6%が十分にICTを活用していないことになる。その一方で、端末未整備の高校では6割強の教師が今後「ICTを活用したい」と答えている。その理由としては、「ビジュアルで見せることができるので、生徒の興味関心をひきやすい」「コロナ禍で学習時間を確保するため」などが挙げられ、76%が「ICT化が進んでいる高校の事例を参考にしたい」と答えている。

  • 端末整備済みの高校でICTを「積極的に活用している」と回答した教師は37.4% 出典:カシオ計算機

また、端末を整備済みの高校において、授業等で使用しているツール、アプリについて困っていることについては、「使い方の習得に時間がかかる」が42.2%で一番多く、「ノートと同じような操作性とは言えず、操作が難しい」(36.9%)、「端末の機種によって使用できない場合がある」(28.6%)と続いた。

  • 端末整備済みの高校における授業等で使用しているツール、アプリで困っていること 出典:カシオ計算機

さらにICT化を進める上での不安に関しては、「教師間の意識にギャップがある」が50%と一番多く、「端末が支給されただけでその後のサポートがない」(38.8%)、「ICTに関する研修が不十分である」(35.7%)と続いた。

  • ICT化を進める上で教師が感じる不安、課題 出典:カシオ計算機

同調査では、高校の授業でのICTの具体的な活用内容についても調査を行っている。ICTの活用で実現している/したいことのトップは共に、「教材のビジュアル化」で61%。一方、ICT整備校の教師の75%が「理解しやすいように、教材をビジュアル化して提示」していると回答しており、理解や知識の定着を促進したいという教師の思いが読み取れる。

続いて、「授業や課題の準備業務を効率化させたい」、「課題をオンラインで配布、提出できるようにしたい」が共に約46%との結果に。一方、「探求型の学習やグループ学習を推進したい」は37%となった。

  • どのような場面でICTを活用しているか 出典:カシオ計算機

  • ICTを活用してどのようなことを実現したいか 出典:カシオ計算機

また、ICTの活用によって「板書にかかる時間」を節約したい教師が62%、「教材準備の時間」を節約したい教師も53%と、多くの教師がICTにより業務の効率化をはかりたいと考えている実態も明らかとなった。実際に、ICT整備校の教師の50%以上が「課題のオンライン上での配布・提出」に取り組んでいることも分かった。

  • ICTを活用して時間を節約したいと思う作業、業務 出典:カシオ計算機

端末や各種ツールの使用、資料作成など、教師自身の基本的なICTスキルについて、端末整備校では「かなり身についていると思う」「ある程度身についていると思う」を合わせて73%だった一方、端末未整備校では50%弱と差が顕著となった。

また、学校や担当クラスの生徒のICTスキルについても同様の傾向となり、端末整備校では「かなり身についていると思う」「ある程度身についていると思う」が60%だった一方、端末未整備校では38%と差が開いた。

放送大学教授の中川一史氏は、「これまでの教師が全てをコントロールして進めていった形から、児童生徒が主体的に、いつでもどこでも普段使いをしながら学習でも生かしていくことになる点を踏まえる必要がある」と述べている。